苦手な人を「避ける」人が失ういくつもの大切な事 「わからない」を拒むと、「わかる」機会を失う
東洋経済オンライン / 2024年2月22日 18時0分
上原先生のゼミナールのなかで、もうひとつ学んだ重要なことがあります。
先生はいつも学生が報告をしますと、「それでいったい何が解ったことになるのですか」と問うのでした。(中略) 「解るということはいったいどういうことか」という点についても、先生があるとき、「解るということはそれによって自分が変わるということでしょう」といわれたことがありました。
それも私には大きなことばでした。阿部謹也『自分のなかに歴史をよむ』
未知のことを「わかる」ためには、「いまはわからない」ものに触れる必要があります。いま「わからない」ものを「わからないので」と拒絶すれば「わかる」機会は失われてしまい、「わかる」ことによって「かわる」機会もまた失われてしまう。だからこそ「わからない人=他者」との出会いは、自分が「かわる」ことへの契機となる。これが、レヴィナスの言う「他者との邂逅がもたらす可能性」です。
さて、レヴィナスは、ともすればわかりあえず、敵対的になりうる可能性のある「他者」との邂逅において、しばしば「顔」の重要性を指摘しています。例えば次のような文章です。
ひとり「汝殺す勿れ」を告げる顔のヴィジョンだけが、自己満足のうちにも、あるいはわたしたちの能力を試すような障害の経験のうちにも、回帰することがない。というのは、現実には殺すことは可能だからである。ただし殺すことができるのは、他者の顔を見つめない場合だけである。エマニュエル・レヴィナス『困難な自由 ユダヤ教についての試論』内田樹訳
これほどまでに「なんだかよくわからないけど、何かとても大事なことが書かれている気がする……」と感じさせる文章も少ないのではないでしょうか。
レヴィナスの文章は全般に難解ですが、言葉がもたらすイメージの広がりを素直にすくい取っていくと、読む人それぞれなりに「ストン」と来るところがあるように思います。
レヴィナスがここで言おうとしているのは、わかりあえない他者とのあいだであっても、「顔」というビジョンを交換することによって、関係性を破壊することは抑止できる、ということです。
『E.T.』における他者の描かれ方
テキストで読んでも、なかなかピンとこないかも知れませんが、同様のメッセージを暗に伝える映画や漫画はたくさんあります。
例えば、地球外生命体(以下、簡易に異星人と記す)と子供との交流を描いたスティーブン・スピルバーグの傑作映画『E.T.』を取り上げてみましょう。
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