名鉄三河線「海線」廃止区間、車社会でどう変貌? 代替バスの運転経路とは異なる人の流れも
東洋経済オンライン / 2024年2月22日 6時30分
矢作川が碧南市と西尾市の境。県道43号岡崎碧南線を進むバスは、西尾市平坂町に入る。ここは1954年まで独立した町だった。
三河平坂駅跡は現在、民家や空き地になっている。廃止から20年が経過したが、駅へ通じる、いわゆる駅前通りにも商店などが集まっていた形跡は残っておらず、町工場が目立つだけ。金融機関や商業施設などが集まる中心地からは少し離れている。
三河線が健在だった時代の地図を見ても、町の構造は当時から大きくは変わらない。鉄道開通前から住宅密集地が形成されており、その外縁部に鉄道は敷かれ、そのまま自動車時代へと移り変わっていった事情がうかがえる。
西尾市中心部へ向かう流れ
また、平坂から一色方面の、かつての三河線と、現存する西尾線の西尾―吉良吉田間は並行するような形で走っており、その間隔は4~5km程度。自動車なら10分とかからない。三河線の輸送量の少なさは、こういったところにも起因していただろう。
西尾市の中心の西尾駅周辺には商業的、行政的な集積もあり、合併前の旧西尾市内各地とは、コミュニティバス「六万石くるりんバス」が結ぶ。
平坂にはかつてもう1本、名鉄の平坂支線(西尾―港前間・1960年廃止)が通じており、ふれんどバスの平坂小南バス停付近に平坂口駅。平坂港前バス停付近に港前駅があった。
この鉄道の跡をなぞるように、今は循環系統の平坂中畑線が走り、1日に13便が設定されている。
西尾市の統計を見ると、この系統と、三河線の駅もあった寺津地区と西尾市中心部を結ぶ寺津矢田線が、2020年度の統計で年間利用客数が5万人台、1便当たりの利用客数が10人以上と、六万石くるりんバスの各路線の中でも良い成績を挙げている。公共交通機関を利用する人の流れも読める。
ふれんどバスも同じ統計では、ここ10年間は年間30万人程度を輸送していた。1日当たりにすると800人強。しかしコロナ禍による外出自粛により利用客の激減があり、さらには少子化に伴う高校生の減少の影響からは免れられない。今後、どこまで回復できるか。
バスは平野部を淡々と走る
その気になって見れば駅の面影が残る平坂港前から、10時23分発ふれんどバスで吉良吉田へ向かう。途中、1、2人が乗り降りしたが、ほぼ空のまま走る。沿線はずっと平野が続く。こういう地形だと、自家用車のみならず自転車、あるいはミニバイクなども公共交通機関の利用客を奪うものだ。
一色高等学校西バス停を過ぎ、旧一色町の中心部に入る。幹線道路から脇道にそれた一色町公民館バス停が、バスターミナルの機能を果たしている。
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