災害時の明暗分ける「立地のリスク」の深刻度 「水や食料を買い込んでおけばよい」ではない
東洋経済オンライン / 2024年2月22日 12時30分
同様の被害は内灘町の全域ではなく、砂丘の内陸側にある緩い斜面のエリアに限定して集中的に見られました。被災された方への聞き取りでは、次のような声がありました。
・50年以上住んでいるがこんなことは初めて。これまでは災害自体にも遭ったことがない
・地震保険にも加入しておらず、復旧には数百万円以上はかかるだろうが、実際にいくらかかるかわからない
・自宅が倒壊したので引っ越しの必要性を感じているが、自宅の解体費用を出せない。このような地域だとは考えもしなかった(石川県ではその後、公費解体制度が実施されることになりました)
今回のように、側方への地盤の流動と著しい沈下を伴って、土地の形状をも変えてしまった被害は、家屋の沈下修正のみで解決できるものではありません。大きく動いた地盤を元通りにすることは、個人で賄えるレベルを大きく超えているものと考えられます。
なお、被害の発生した各地点は、町の液状化マップ等ではリスク表示がされているエリア、またはその近郊であることが多く、一定の注意喚起はなされている状態でした。
しかし、居住者の聞き取りでは「液状化マップの存在すら知らなかった」という話もありました。個々の居住世帯に対して災害リスクを伝える義務がない、ということがこのような事態にもつながっているのです。
私たちはどうすればいいのか?
まず、地震に限らず台風等による水害や土砂災害でも、立地によってリスクの大小は全く異なる、ということを知ってください。「どこに住んだとしても、災害が起きたらどうしようもない」という声もありますが、これは違います。
特別な対策や避難の必要もなく、耐震性が強い家さえ建てておけば住み続けられる立地もあれば、ひとたび災害に見舞われれば住み続けられなくなる立地もあるのが実態です。
このような自然災害リスクは、土地の地価には必ずしも影響していません。地価が高いからといって災害リスクも低いということにはなりません。裏を返せば、比較的お得な価格帯の地域でも、災害リスクの観点からは非常にリスクが低い立地も存在しているのです。
決して、災害リスクがある「土地が悪い」「住むな」というわけではありません。先祖の土地、親が建てた(買った)家、愛着のある地域のコミュニティなどは、かけがえがないものでしょう。
伝えたいのは、今住んでいる場所にどのようなリスクがあり、いざ災害が起きたら避難が必要になるかどうか、優先すべき対策はなにか、いざというときにどのような行動をとるか、といったことを、普段から家庭や地域でよく確認し、考えて、対策を実施しておいてほしい、ということです。
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