大和証券の子会社が自ら「農園経営」を行う事情 「農業×金融」で稼げる農業の実現を模索する
東洋経済オンライン / 2024年2月24日 8時0分
静岡県磐田市。茶畑が広がる丘陵地に、高さが6メートルにもなる巨大なビニールハウスが2棟そびえる。合わせて3ヘクタールの敷地で栽培しているのは色鮮やかなパプリカ。果肉が厚く、栄養価の高い商品として高値で取引されている。
【写真】ビニールハウスで栽培されているのは色鮮やかで肉厚なパプリカ
ビニールハウスでは、日照量や気温などをコンピューターで常時管理し、最新技術を駆使して最適な植物の生育環境になるよう調節している。いわゆる「スマート農業」のひとつだ。
ここは「スマートアグリカルチャー磐田(SAC磐田)」の農園だ。モデルとするのは、農産品輸出大国のオランダで拡大する大規模施設園芸。巨大なビニールハウスを建設し、その中でパプリカを栽培する。
もともとは富士通傘下の農園
2010年代に日本でも企業による農業参入が増え、スマート農業は一種の流行期を迎えた。一方で事業がうまくいかず、撤退に追い込まれるケースが近年少なくない。SAC磐田も苦しんだ時期があったものの、現在は継続的な黒字を確保できているという。それはなぜなのか。
SAC磐田は2021年10月に大和証券グループ子会社の大和フード&アグリが買収し、社長も派遣している。もともと富士通傘下の農園だったが、販売先が低価格志向の量販店だった反面、メインターゲットが“「美」を押し出した意識の高い人”であるなど、ちぐはぐだった。
「農業は生産と販売が両方かみ合っていないとだめだが、そこがうまくいっていなかった」。SAC磐田の久枝和昇社長はそう話す。
久枝氏は2000年に広島県でトマトの大規模温室栽培事業を立ち上げ、その後は栽培技術コンサルとして農業の事業化に関わってきた。2018年に大和証券グループが100%出資で大和フード&アグリを設立し、久枝氏を取締役として迎え入れた。SAC磐田社長には2021年に就いた。
大和フード&アグリがSAC磐田を買収してまず取り組んだのは、マーケティング面での工夫だった。
仲卸業者などを通して販売すると、ほかの商品との差別化ができずに十分な価格で販売することができない。そこで量販店開拓に自ら乗り出した。大和証券の新宿支店で営業担当の課長をしていた社員が異動し販路拡大をリードした。
その結果、1年間で20社もの新規得意先を開拓。売上の3分の1をカバーするほどになった。ブランドを明確にしたことで値上げもできるようになり、買収後1年で黒字転換したという。
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