紫式部さえ「出世の道具」に使った道長の悲しい性 権力をほしいままにした彼が「求めたもの」とは
東洋経済オンライン / 2024年2月25日 19時0分
2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」で注目される紫式部や『源氏物語』。1000年以上も前に日本の一女性が書いた「光源氏の物語」は、書かれた当初から書写されつづけ、絵巻物にもなって、ひさしく伝えられてきました。
そんな、源氏物語にはたくさんの謎があり、作者の紫式部や、彼女の周りの人物にも、ずいぶんと謎めいたところがあるようです。作家・岳真也さんの著書『紫式部の言い分』から、その実態に迫ってみましょう。
『源氏物語』は帝への最高の献上品
ようやく宮中に自分の居場所を得た紫式部。『源氏物語』を書き進めることにより、「物語の続きを読みたい」という読者は、増えつづけていきました。
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かの一条天皇でさえ、続篇を待ちのぞんでいるのですから、帝に仕える貴族たちも、物語の写本を争うように求めはじめます。道長自身も文学好きだったようで、『源氏物語』を読みこみ、内容を把握していました。
道長としては、紫式部を宮中に入れたことが、「これほどに大きな成果を得られる」とは思っていなかったでしょう。そのくらい『源氏物語』の人気は、群を抜いていたのです。
一条帝は、物語の最新版を読むために、道長の娘・彰子(しょうし)の御殿へ足繁く通うようになりました。
ちなみに彰子中宮が住む藤壺(ふじつぼ)御殿は、帝の住まい、清涼殿(せいりょうでん)のすぐ近くでした。彰子が女御(にょうご)として入内(じゅだい)したときに、道長は政治力を使って、そのように手配したのです。
道長は広大な荘園を所有し、経済力(財力)の面でも、他の貴族を圧倒していました。彰子の住み暮らす藤壺御殿を華麗に飾り立て、高価で上質な絵巻物や書物をふんだんに収集できたのも、その財力の賜物(たまもの)だったのです。
さらに、彰子に仕える女房として、知性あふれる女性をあつめようとしました。紫式部、しかり。和泉(いずみ)式部や赤染衛門(あかぞめえもん)などの有名な歌人も、彰子付きの女房として出仕させたのです。
『彰子サロン』をつくりたかった
おそらく道長は、亡くなった定子(ていし)皇后の御殿を意識していたのでしょう。清少納言をはじめ、すぐれた女流歌人や文人をよび寄せた定子の御殿(登華殿:とうかでん)は、一条天皇のお気に入りだったのです。
1回目の記事で私は「定子サロン」と言いましたが、それに負けない御殿、「『彰子サロン』を、道長はつくりたかったのだ」と思います。
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