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大阪交通事情、「55割」の次は空飛ぶタクシー? 「タクシーの現場はカオス」 ②大阪編

東洋経済オンライン / 2024年2月26日 8時0分

「ウチの会社はコロナ禍でも全額、給与保証をしてくれた。だから人がほぼ辞めなかった。でも9割以上の会社は、そうでなかったわけ。ドライバー同士でそういう評判は回るから、ウチや保証をしてくれた会社に人が集まるようになった。昨年5月の値上げや深夜の“安売り”が消えたことも大きくて、この年でも隔日勤務で平均8万円ほど売っている。ようやく食べられるようになったわ」

2025年に大阪・関西万博を控える大阪では、影響がタクシーにも及んでいる。吉村洋文・大阪府知事は万博開催に合わせてライドシェアの必要性を訴えており、タクシー業界からは反発の声が大きい。

なんばでタクシーに乗車すると、ドライバーは「万博で街が盛り上がっていると感じることはありまへん」とため息混じりにいう。商店街などを散策しても、「見切り発車が過ぎる」などの冷ややか意見も目立った。

そんな中、「万博は採用にはプラスに働いている」という会社もあった。住之江区に本社を置く、大阪最古のタクシー会社の1つである大宝タクシーグループだ。

同社は、4代目に当たる宝上卓音(30)取締役と宝上和音取締役(同)の双子兄弟が実質的な舵取りを行っている。万博の目玉の1つとされる「空飛ぶタクシー」事業にグループ企業で注力していることが求職者に刺さっている、と宝上卓音氏が明かす。

「ウチの傾向でいうと、圧倒的に20代~40代前半の若手が多い。この2年で平均年齢も44歳まで下がり、年間で80人採用できた。

彼らが『公共性が高い万博で空飛ぶタクシー導入を狙う会社なら将来も大丈夫だろう』と話すように、安心にもつながっています」

求職者の傾向や働き方にも変化が生まれたとも続ける。

他社が手放した車両をどんどん買い取る

「『稼ぎたい』と、バスやトラックのほか飲食業などからの転職者が多いことは特徴的です。働き方は隔日勤務より、昼勤や夜勤希望者が増えています。面接で合わないなと感じたら、ウチは容赦なく落としますよ。そんな姿勢が長期的な利益につながるという思いもあります」

タクシー不足が叫ばれる今こそ商機を見出していると、宝上和音氏は述べる。人材を獲得できない会社が、保有するタクシーを安価で手放す傾向は全国的に進む。現行法では、会社側が増車するためには車の営業権ごと買い取る必要がある。コロナで体力を奪われた中小企業が増加していることを好機と捉え、2023年は21台増車に至った。和音氏が言う。

「タクシー会社の視点で言うなら、今の大阪は需要と供給のバランスが取れている。ただ、利用者のほうからすれば、ドライバーの交代がある午前11時や午後5~6時前後、あるいは”有事”の際はタクシーがまだ捕まりにくい。

この現象も、人が定着する会社に人材が集まれば解決できるはず。大阪で意欲を失っている事業者から、どんどんタクシーを買い取って拡大を狙っています。『東京より質が低い』と言われがちな大阪のタクシー業界を、若い力で変えていきたい」

商都・大阪のタクシー業界は今、変革のときを迎えている。その真価を発揮するまでに残された時間はそう長くはない。

栗田 シメイ:ノンフィクションライター

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