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「東京メトロ」上場前に知っておくべき注目点 2つの新線、不動産開発、都営地下鉄との関係…

東洋経済オンライン / 2024年2月27日 6時30分

この売却スキームが決まるまでには、もう少し複雑な背景がある。1986年、地下鉄ネットワークがほぼ完成した段階で旧・帝都高速度交通営団(営団地下鉄)を完全民営化する方針が閣議決定された。2004年には東京メトロが設立された。そして、有価証券報告書には2008年開業の副都心線を最後にその後新線建設は行わないという趣旨の記載がしばらくの間されてきた。新線建設は巨額の費用がかかり、財務を圧迫しかねないという判断からだ。

そこに、通勤電車の混雑を緩和する、東京の国際競争力を高めるといった観点から東京圏の鉄道ネットワークを充実させる方針が2010年代半ばに国によって打ち出された。その中には東京メトロ有楽町線に分岐線を設け、豊洲から半蔵門線の住吉まで延伸する構想や東京メトロ南北線の白金高輪駅から品川駅まで延伸するといった構想が描かれていた。有楽町線の延伸は東京メトロ東西線の混雑を減らす効果がある。また、品川は羽田空港アクセスの起点であるとともに将来はリニア中央新幹線の起点にもなる。品川に南北線が乗り入れれば、交通結節点としての機能がさらに充実する。

2つの新線計画の建設費用は約4000億円。国は東京メトロが地下高速鉄道整備事業費補助と財政投融資を活用した都市鉄道融資で建設費の全額を調達するスキームをまとめた。資金面の心配がなくなった東京メトロは2022年1月に国に鉄道事業許可を申請し、同年3月に許可を取り付けた。どちらも2030年代半ばの開業を目指す。財務面での不安が解消されたことから、東京メトロの有価証券報告書の記載は「両路線の整備主体となることがさらなる企業価値に資する」と改められた。

なお、東京圏の鉄道ネットワークを充実させる計画には東京駅から銀座、築地などを経て晴海、豊洲市場、東京ビッグサイトに至る都心・臨海地域地下鉄という構想もある。東京メトロは「自社ネットワークとは関係がない」として消極的で、都は2月2日に整備主体として鉄道・運輸機構、営業主体としてりんかい線を運営する東京臨海高速鉄道に参加させる方向で検討することを発表した。

新型コロナが猛威を振るっていた時期、東京メトロの経営はさんざんだった。コロナ前の2018年度、東京メトロの輸送人員は私鉄トップの27億6616万人で、2位東急の11億8931万人を約2.3倍上回っていた。それがコロナ禍の2020年度は34%減少の18億1948万人に落ち込んだ。同年度の連結決算は売上高が31%減の2957億円、営業損益は前年度の839億円の黒字から402億円の赤字に転落した。

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