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ウクライナが「守勢」を余儀なくされている理由 「勝ちすぎ」を恐れたバイデン政権の思惑が裏目に

東洋経済オンライン / 2024年2月27日 10時0分

ロシア軍に比べ圧倒的に少ない砲弾の保有数回復や、攻撃用ドローンの一層の拡充など軍事態勢面の整備を急ぎながら、2024年を2025年以降の勝利に向けた準備の1年にする構えだ。

まずは東部・南部における前線をしっかり守る「戦略的防衛」戦略を実行する。そのうえで、何らかの反攻作戦を行う構えだ。ゼレンスキー氏もアメリカのテレビとの会見で、驚くような攻撃をするとの趣旨の発言をした。ミハイル・ポドリャク大統領府長官顧問も最近のインタビューの中で「地上戦で、より効率の良い作戦が必要だ。守っているだけではだめだ」と述べている。

その場合、どのような攻撃をするのか。執拗な水上ドローンによる攻撃で、黒海艦隊の作戦実行能力を事実上奪ったのを受け、艦隊司令部があるクリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア大橋を破壊するのか。あるいはロシア領内で大規模なインフラ攻撃を行うシナリオなどが指摘されている。守りと攻めの両立を本当にできるのか。シルスキー氏の手腕が問われる。

一方、2024年3月半ばに大統領選を控えるプーチン氏は、アブデーフカ制圧を受け軍事的にも外交的にも自らが状況を動かせる主導権を握ったと判断しているだろう。東部に加え、今後南部でも攻勢を仕掛けるとみられる。

そして、自らに対し融和的とみられるトランプ氏が大統領選で返り咲きを果たすのを待つ戦略だろう。トランプ氏がロシアに有利な、何らかの「解決案」をキーウに押し付けることも期待しているのだろう。

停戦協議をちらつかせるロシア

その意味で注目されるのは、最近ロシアがウクライナとの停戦協議に応じる可能性をほのめかすプロパガンダ(政治宣伝)戦略を世界規模で展開し始めた兆候があることだ。

最近、各国では増え続ける兵士・市民の犠牲を目の当たりにして、「戦争疲れ」の傾向も次第に目立ち始めている。これを利用して、クレムリンとしてはウクライナに対し、停戦に応じてロシアへの大幅譲歩を迫る機運を各国で盛り上げる戦略だろう。

しかし、停戦と言っても、独立国家としてのウクライナの存在を認めていないプーチン氏に、ウクライナ全土の制圧作戦を行うための再編期間を与えるだけだ。

ウクライナへの「支援疲れ」も一部で出ていた欧州もこのところ、ロシアに対する防衛問題を、アメリカ依存ではなく、より「自分事」として動き始めている。NATO加盟国への攻撃の可能性を現実問題として捉えているからだ。

欧州連合(EU)は2024年2月の臨時首脳会議で、2024~2027年の4年間にウクライナ支援へ計500億ユーロ(約7兆9500億円)を充てることでスピード合意した。さらに軍事産業強化にも乗り出した。とくに砲弾の供給体制を強化しようとしている。

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