社員の意識の低さを嘆く「残念な経営者」への直言 まず「会社が社員に強いているムダ」をなくそう
東洋経済オンライン / 2024年2月28日 7時0分
「電通の労働環境改革を、最優先事項として全力でやる。小柳、きみも手伝ってほしい」
2016年10月、後に電通の社長になる常務から呼び出され、時短の「特命」を受けた小柳はじめ氏。2年間という限られた時間の中で、パフォーマンスを落とすことなく法定外労働時間を60%削減できたのは、なぜだったのか。
その全手法を「8つの鉄則」にまとめた書籍『鬼時短――電通で「残業60%減、成果はアップ」を実現した8鉄則』が刊行された。
本記事では、その「はじめに」を一部編集のうえ、全文公開する。
改革の成果がいまいち出ない根本理由
この本は、経営陣のみなさんや経営陣をサポートするみなさんが、真剣に貴社の「時短」を考えるきっかけとしていただくために書きました。
2017年から「働き方改革」が本格化すると、たくさんの「改革ノウハウ」が世に現れました。
エクセルを駆使しよう、カレンダーアプリを共有しよう、メールを短くしよう……ネットや書籍には「時短術」があふれています。
この本は、そのようなノウハウ集とは少し違います。
この数年間、多くの企業が「働き方改革」を始めたのに、なぜいまひとつ成果が出ていないのか、その根本の原因を読者のみなさんと一緒に考えるための1冊です。
私はこれまで、多くの企業の「時短」に取り組んできました。
最初の機会は、30年以上勤務した電通で、4年間グループ会社に出向したときです。そこで利益率を向上させつつ、残業時間を大幅に短縮するという経験をしました。
その後、電通本社に帰任し、労働環境改革プロジェクトに参加。2年間で残業時間が半分以下に激減していくのを目のあたりにしました。
4年前に独立してからは、コンサルタントとして企業に「時短から始める企業改革」のアドバイスをしています。
まずは「会社が社員に強いているムダ」をなくせ
その手法はシンプルで、以下の3つを、「経営陣に」口をすっぱくして言い続けることです。
①時短は「社員のムダな動きをやめさせる」ことではない
②時短は「会社が社員に強いているムダをなくす」ことである
③時短は「会社から社員への最高のもてなし(リスペクト)」である
考えてみてください。入社したその日から、「これから定年まで、いかにムダに時間を浪費してやろうか」と考えている社員なんていません。
しかし会社の「お作法」を叩き込まれるうちに、「なるほど、会社の求めるムダを、イヤな顔ひとつせずこなしていくことが、いちばん大切なんだな」と気づきます。いつしかその社員も「会社が強いるムダ」に多くの時間を割くようになり、そして後輩たちにも「ムダのお作法」を教える側に回ります。
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