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書籍も多数「繊細さん」ブームに潜んでいる弊害 HSPの概念だけでは説明できない「生きづらさ」

東洋経済オンライン / 2024年2月29日 16時0分

臨床心理士や公認心理師、精神科医など正規の治療者の多くは、現場でクライアントが「自分はHSPかも」と訴える場合、内心は違和感を覚えながらも、気持ちを尊重し、否定せずに受容したり、あるいは聞き流したりしているのが現状です(よほど、ケアや治療の妨げとなる場合は、やんわりと修正をします)。

生きづらさは、HSPだけでは説明できない

HSPで説明される各種の症状は、実際には、さまざまな要因から生じます。例えば、発達障害においても生きづらさや感覚過敏や感覚鈍麻が知られています。

あるいは、成育環境に問題があると自他の区別、他者との距離感がうまく取れずに、対人関係でストレスを強く感じたりすることもあります。

うつ病、パニック障害、不安障害、強迫性障害など精神障害においても、ある種の過敏さや鈍麻などが見られることがありますし、躁うつ体質によって調子を崩す場合もあります。

継続的にストレスがかかることでストレス障害(後述)となりますが、そうした際も、感覚過敏や感覚鈍麻が生じます。生きづらさや繊細さの原因は家族関係、環境からももたらされます。

人間関係が悪い職場や家庭は、まさに“針のむしろ”と例えらます。さらに生きづらさはより大きな環境の影響、文化、社会、経済の風潮からも、もたらされます。

本来、心理士や精神科医は、こうしたことを問診などで伺いながら総合的に悩みの背景を捉えようとします。

概念というのはその方の本当の意味での解決につながるためにあるものです。できるかぎり、実態に即していて、かつ奥行きのある見立て・仮説が必要です。

私たちが抱えている敏感さ、生きづらさといったものは、「HSP」という概念からだけでは、とても説明できない背景が存在するのです。HSPを用いて説明、解決に取り組むとしても、過剰な適用によって問題解決の妨げとならないように、慎重な吟味がもとめられます。

そんなHSPブームの陰で、生きづらさの原因を説明するものとして、長年のさまざまな調査や研究の積み重ねにより特に注目されている領域があります。それは、「発達過程におけるストレスの影響」です。

例えば、子どもの前での夫婦喧嘩は、直接的な虐待以上のダメージが生じることをご存じでしょうか? 夫婦喧嘩なんてどこにでもあるし、そんなことはたいしたことではない、などと思っていないでしょうか? 

夫婦喧嘩を目撃することで脳にダメージ

実は、脳科学での調査によって、子どもが夫婦喧嘩を目撃することで脳にダメージが生じることがわかっています。これが成長してからの生きづらさの原因となります。そのため、子どもの前での夫婦喧嘩は、現在では「面前DV」と呼ばれ、児童相談所が介入する事案となっています。

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