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書籍も多数「繊細さん」ブームに潜んでいる弊害 HSPの概念だけでは説明できない「生きづらさ」

東洋経済オンライン / 2024年2月29日 16時0分

発達過程での過度なストレスは、「発達性トラウマ」、あるいは「逆境的小児期体験(ACE:Adverse Childhood Experiences)とも呼ばれています。実際に、アメリカにおいて保険会社が協力し数万人が参加する大規模な調査が行われています。

その結果、小児期に逆境体験を経験した人は、成長してから、うつ病などの精神障害、糖尿病、脳卒中、心臓疾患などのリスクが数倍から数十倍に跳ね上がることがわかっています。そして、小児期に逆境体験を経験していないと答えた人は3分の1と、想像以上に多くの人が逆境体験を経ているというのは驚きの結果です。

さらに、「愛着(Attachment)」という観点からも厚みのある研究が行われており、子ども時代の親の関わりがその後の人生や健康、対人関係に大きな影響を及ぼすことが知られています。それらは「愛着障害」と呼ばれ、日本でも関連する書籍がたくさん出版されています。

そして、小児期に虐待などストレスを受けた子どもは、発達障害と酷似した症状を呈することが知られており、それらは「第四の発達障害」あるいは、「発達性トラウマ障害」と呼ばれています。発達障害とされるものの多くが実は環境由来の症状ではないか、と指摘されています。

「トラウマ」という言葉自体はおそらくほとんどの方がご存じかと思いますが、その内容を詳しく知る人は少なく、自分とは関係のないもの、PTSDのように特別な事件や事故を経験した人が被るもの、と感じるかもしれません。

しかし、実はトラウマはとても身近なものです。先ほど夫婦喧嘩が重大なダメージを与えると例示したように、日常にあって、これまでの常識であれば「そんなことくらい大したことない」「どこにでもある」「大げさな」と思われるようなストレスによってトラウマは生じます。

特に、人間も含めて動物は些細なものでも長期にわたるストレスにはとても脆弱なのです。

本人がトラウマの自覚症状がないときも

トラウマとは、日常の出来事も含めたストレスによって生じる「ストレス障害」と捉えられます。近年、ニュースでも問題になるパワハラ、モラハラなども、トラウマの大きな原因の1つです。

いじめや家庭内の不和はもちろん、親が親として適切に振る舞えていない家族の機能不全もとても重大な影響を及ぼします。本人も自身がトラウマを負っていると気がついていないこともしばしばです。

そうした日常のストレスによるダメージの結果、「緊張しすぎる(過緊張)」「気を使いすぎて人とうまく付き合えない(過剰適応、対人関係での過敏さ、繊細さなど)」「仕事がうまくいかない」「集中できない」「不安が強い」「うつっぽい」、感覚過敏や鈍麻など冒頭で触れたHSPで説明されるようなさまざまな症状も含め、私たちが日々経験する身近な困りごと、生きづらさとなって表れるのです。

みき いちたろう:公認心理師

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