「日本の議員と深い関係?」スパイ防止法の有効性 中国非公式警察関係先を捜査した狙いとは
東洋経済オンライン / 2024年2月29日 11時30分
捜査の手法自体はこれまで“公”になっているもののみをあげたうえで、具体的手法の言及は避けたが、それでもこれまでの捜査手法と大差ないのは認識いただけたと思う。
一方で、その最高刑が死刑または無期懲役とする同法による抑止力には一定の効果が見込める。諜報活動自体を行う工作員はいわばプロであり、同法の刑は抑止とはならないだろうが、それに加担してしまう一般人や議員側に対する抑止は見込めるだろう。
さらに、法的根拠を持った「防止」が期待できることは重要だ。例えば、「② 探知or収集」行為について、“疑い”がある段階で捜査を積み重ね、令状の発付に耐えうる「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」の要件を満たすことで、法的根拠をもって探知行為の段階での検挙が見込める。これは機密情報の漏洩がなされる前の段階での防止となり、非常に重要な点だ(逮捕の必要性も満たす必要があるのは言うまでもない)。
ただし、スパイ防止法が存在したとしても、捜査の難しさは変わらない。
筆者は、捜査側の目線だけで言えば、(1)行政通信傍受の整備や司法通信傍受の拡大、(2)囮捜査の整備は、非常に効果が大きいと考える。
行政通信傍受とは犯罪が起きる前に行政機関が行う通信傍受で、未然に傍受することで犯罪の準備行為=「① 外国に通報する目的」や「② 探知又は収集」行為の立証が格段に容易となるが、現在は行政通信傍受は認められていない。
また、犯罪捜査における司法通信傍受では、犯罪行為が行われた“後”を前提に、その対象は薬物関連犯罪、銃器関連犯罪、爆発物関連など一部の犯罪に限定されている。今後、行政通信傍受の整備に加え、司法傍受の対象犯罪を拡大し、諜報事件を含むことも検討すべきである。
これにより、既存の刑法や不正競争防止法等においても、例えば機密情報漏洩事件では、行政通信傍受により未然に工作員と相手方とのコミュニケーションを傍受することで、その機密情報を工作員に渡す前に検挙できる可能性が大きくなるほか(未遂の罰則規定がある犯罪に限る)、司法通信傍受により、一層の真相の解明が期待される。
また、囮捜査については、現状では根拠規定がなく、グレーな手法となっており、日本における捜査においても一般的な手法とは言えない。まず根拠規定を整備したうえで、囮捜査の危険性や捜査ノウハウの蓄積など乗り越えるべきハードルは高いが、実施することで決定的な証拠が引き出せるほか、工作員側も疑心暗鬼になり一定の抑止も見込める。さらには、検察側の話にはなるが、司法取引を拡大させることで、スパイ網の一網打尽の可能性も出てくる。
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