「日本の議員と深い関係?」スパイ防止法の有効性 中国非公式警察関係先を捜査した狙いとは
東洋経済オンライン / 2024年2月29日 11時30分
これまで1985年自民党のスパイ防止法案をもとにその有効性や捜査手法について考察したが、実は、本事案の「同議員を感化させ中国を利する経済・政治活動を行っていた/行わせていた」行為については、検挙できない。なぜならスパイ防止法の構成要件にも該当せず、贈収賄行為等がなければ現行の法でも違法性は問えないと思われる。
よって、スパイ防止法に求められる内容は、1985年のスパイ防止法案に準拠するものでは足りず、例えば2023年7月に英国で制定された国家安全保障法は一つの参考となる。
ちなみに、英国では、2023年に相次いで中国による諜報活動関連の事件が摘発されており、大きな問題となっていた。
同法では、諜報活動による情報収集・漏洩に加え、例えば外国の諜報機関への協力を対象とし、外国の諜報機関による英国関連の活動(※1)を実質的に援助することを意図している行為(※2)などもその対象としている。
※1:英国内で行われる活動や、英国外で行われる活動で英国の安全または利益を害するもの
※2:外国の諜報機関を実質的に援助する可能性のある行為には、“情報、物品、役務または金銭的利益”を(直接的か間接的かを問わず)提供すること、またはそれらへのアクセスを提供することが含まれる。
日本では、中国の非公式警察問題だけではなく、中国・ロシアによる各種諜報活動による脅威が認識されて久しいが、いまだその危機意識が欠如しているような事件が散見される。
一方で、日本ではスパイ防止法の成立を目指すには、根強い反対論を乗り越える必要がある。スパイ防止法をはじめとした法整備を求める声が重要であると同時に、まず変えていくべきは、議員を含む我々社会におけるカウンター・インテリジェンスの意識である。
稲村 悠:日本カウンターインテリジェンス協会 代表理事
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