名店監修の「ラーメン鍋スープ」が300円しない理由 ダイショーが市場を開拓、「鍋=冬」常識にも変化
東洋経済オンライン / 2024年2月29日 11時50分
すでにニッスイから「山頭火」監修の鍋スープが出ていたものの、ダイショーでもラーメン店監修鍋スープをラインナップしてバリエーションを作っていったら、さらに鍋の可能性が広がるだろうと考えた。
「一風堂」「武蔵」から始まった
こうして2020年から交渉を始めたのが、博多豚骨ラーメンの横綱「博多 一風堂」と東京の醤油ラーメンの名店「麺屋 武蔵」だ。まずこの2店舗のチョイスのセンスが良い。
博多豚骨ラーメンを全国区にし、世界にまで進出したパイオニア「一風堂」と、つねに新しいことにチャレンジして話題を作り続ける「武蔵」は、新たな取り組みをスタートするにはピッタリのお店だ。
それを知ってか知らずか交渉をスタートし、2店舗とも快くOKを出してくれた。ちょうど「一風堂」の本部にも鍋スープを出してくれという問い合わせが来ていたようで、話はとんとん拍子で進んだ。
2021年9月1日にある量販店限定で発売を開始。発売から一気に火がつき、9月2週目には欠品し、全国から問い合わせが殺到した。なんと予想の8倍の売り上げだった。
「コロナ禍で外食店がコース料理で鍋を提供しなくなっていたこともあり、鍋スープ市場全体が右肩上がりだったことは確かですが、それにしてもすごい反響でした。ラーメン店さんにおいても営業時間の短縮などもあり、新たな売り上げ創出の機会になったと聞いております」(商品企画部 岡田正亀さん)
その後、2022年には札幌味噌ラーメンの「すみれ」、2023年には京都発祥の大人気チェーン「天下一品」の監修鍋スープを発売し、どちらも大ヒットを記録している。
長期にわたるダメ出しを乗り越えて…
筆者は各社の名店監修鍋スープを食べているが、現在発売されているものの中では「すみれ」「天下一品」の2商品を推したい。素晴らしいクオリティだ。
この大ヒットを受けて、各社が各地の名店と交渉をしているが、現在のところ契約は早い者勝ちになっている。全国の名のあるお店には各社から問い合わせが殺到していることだろう。
しかし、相手は老舗の名店がほとんどで、長期にわたる味のダメ出しが行われる。
名店を納得させるだけのクオリティで開発できるかが肝になってくる。ここには開発者の血のにじむような努力がある。「すみれ」や「一風堂」は1年、「天下一品」はなんと2年もかかった。
そう簡単に出せるものではないのだ。
「もともと豚骨や豆乳の鍋スープを出していることもあり、知見はあります。豚骨の乳化がほどけないような技術や、風味の出し方など技術を駆使してお店に納得していただけるものを開発しています。現在のペースだと、新しい商品の開発は年に1店舗ぐらいになると思います」(商品企画部 谷口真帆さん)
鍋スープにある「300円の壁」をクリアする価格に…
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