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「供給ショック」に対応、日本の"耐久力"の力強さ エネルギー資源は海外頼み、どう策を講じる?

東洋経済オンライン / 2024年3月1日 15時0分

これなら日本で事業展開するうえでの採算をはじくと、アメリカよりも圧倒的に利益率は高そうです。残念ながら諸外国との比較データは手元にありませんが、かつて急激に円高が進んだ頃は、競争力を国際比較すると、もう日本でモノをつくる意味はないとまで断言されていたのですが、前提条件はがらりと変わってしまいました。

一般的には円が弱くなったからだという認識が広がっていますが、同時に日本の労働者の賃金が、もう何年も上がっていないことが根本的な理由であることも見逃せません。

供給ショックに対する耐久力を高める

石油危機や半導体不足などの供給ショックについても簡単にまとめておきたいと思います。エネルギー資源を海外からの輸入に頼る日本では、この手の供給ショックは、それこそ死活問題でした。“石油危機”と呼ばれた、1973年に原油価格が70%上昇した際には国中がてんやわんやとなり、後に「狂乱物価」と呼ばれて人々の心に長く記憶されることとなりました。

しかし、このときのショックを教訓に、日本はこの手の供給ショックに対する耐久力を高めてきました。それが先述した“複雑”な流通経路であり、わかりやすく言えば仕入れ価格の上昇を、川上から川下までの長い流通経路のなかで、みんなで痛みを分かち合うような構造ができたのです。

その結果、川上から川下への物価の変動は下図のようなグラフで説明される仕組みができ上がりました。

このグラフは、通常の消費者物価指数(CPIコア:前年同月比)と企業物価指数(PPI:3年前比の3分の1)を比較したものです(ともに年間平均値)。企業物価指数を様々に加工していたのですが、この3年前比の3分の1というグラフが最も消費者物価指数に近い形となりました。

海からのインフレは3年かけて届く

シンプルに答えを書くと、海からやってきたインフレを、日本経済は川上から川下へ、そして消費者に届くまでのあいだ、3年という時間をかけて価格調整をしているようです。それは関係する人々に少しずつ痛みを与えているのですが、極力最終顧客には“ショック”を与えないようにしている、いかにも日本人らしい涙ぐましい努力にも見えます。

しかし、これもまた日本における物価の典型的な“粘着性”の姿です。今回のように、企業物価が急激な上昇を見せ(2022年12月に前年比で10.6%を記録しましたが、いまのところこれがピークとなる可能性が高そうです)、それが高止まりを続けると3年前比の3分の1の水準も、当分のあいだ6%台を記録することになりそうです。

岡崎 良介:金融ストラテジスト

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