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豪雪で露呈、オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り

東洋経済オンライン / 2024年3月1日 6時30分

オーストリアの都市間輸送を担う「レイルジェット」。7両固定編成の客車を機関車が牽引・推進する(撮影:橋爪智之)

2023年12月初旬、ドイツやオーストリアなど中欧と呼ばれる地域を中心に、非常に強い寒波が襲った。ミュンヘンなど大都市周辺でも、積雪は数十センチを超え、チェコ共和国南部では同国での観測史上最低となるマイナス28℃を記録した。

【写真】1両ごとに切り離せないレイルジェット。一方、自由に増解結できるのが客車列車の強みだ

除雪が追い付かないほどの積雪によって交通網はマヒし、ドイツ南部からオーストリアへかけての地域は、空路・陸路ともに数日間にわたって交通機関が全面的にストップするなど大混乱となった。

主力特急車両が相次ぎダウン

かつてないほどの低い気温と積雪により、除雪完了に伴う運行再開後も列車に不具合が相次いだ。オーストリア連邦鉄道(ÖBB)の都市間特急「レイルジェット」は2023年の時点で60本の列車がオーストリアおよびその周辺国との間を結んで運行しているが、このうちの1割にあたる6本が完全に使用不能となり、工場で修理せざるをえないという緊急事態となった。

だが、工場も修理だけではなく、日常の定期検査も並行して行わなければならないというキャパシティの問題があるため、使用不能となった編成のうちすぐに修理に取り掛かれたのは6本中4本だけだった。

ほかの54本の編成についても、一時は完全な状態で運行ができる編成がわずかに12本しかなく、残りは営業用として動かせる状態にはあるものの、ドアやトイレなどが故障した不完全な状態で営業せざるをえなかった。運行中に故障が悪化し、運転打ち切りや運休が相次ぐ結果となった。

運休こそ逃れた列車に関しても代替運行となり、ローカル列車などに使用される通常客車を使用した列車も見られた。レイルジェットは、ビジネスクラスと呼ばれる特等席を筆頭に通常の1等・2等車、そして食堂車を連結しているが、代替の列車にはビジネスクラスや食堂車は連結されず、サービスダウンは否めなかった。

レイルジェットは、従来の客車特急列車インターシティの上位に位置する列車として2008年に誕生。客車ではあるが1両ごとに切り離しはできず、完全に固定された7両の編成を機関車が牽引・推進するもので、客車列車というよりは電車に近い。いわゆる高速列車ではないものの、最高時速は230kmに達し、洗練された内外装デザインも含め、従来型客車の旧態依然としたイメージを打ち破る車両となった。

2016年までの間に60本が製造され、チェコ鉄道にも同型車両が7本納入された。現在は、ウィーン―ザルツブルク間などの主要幹線において、新幹線で言うところの「のぞみ」や「こだま」のような、速達タイプ(RJX)と各駅停車タイプ(RJ)が設定されるなど、オーストリア国内における都市間輸送の大半をこのレイルジェットが担う形となっている。

1両ごとに切り離せないレイルジェット

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