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認知症女性「謎の行動」繰り返す涙ぐましい"真意" 帰宅願望や夜間徘徊を生む「過去の呪縛」とは?

東洋経済オンライン / 2024年3月2日 14時0分

その翌日も、同じように出かけました。今度は車を呼ぶ必要もなく、二人で歩いて施設に戻りました。所要時間は1時間ちょっとです。

この日は夕食前に帰れたので、「夕食の準備を手伝ってもらえませんか」と尋ねてみました。

おばあちゃんの反応はどうだったかといえば……。

笑顔で「ええよ」と返してくれたのです。

おうちに帰りたい、ということは忘れてしまっているようでした。

4日目も同じように施設を出たものの、このときは最初から、ただの散歩と変わりませんでした。30分ほど歩いたあと、「夕食の準備があるから帰りましょうか?」と聞くと、「そうやな」と即答してくれたのです。

そして5日目には、夕方になっても「うちへ帰る」と言わなくなりました。

「歩かなくてもいいんですか?」と確認すると、「今から行ったら、この人らの晩ごはんに間に合わんがな」と、やさしい笑顔です。

それ以降、施設で食事の準備をすることがおばあちゃんの日課になりました。

それまで、夕方になるたび家に帰りたがったのは、「家で夕食の準備をしなければいけない」という従来の習慣にとらわれていたからなんだと思います。

誰にでも、それまで生きてきた歴史があり、その人の世界やルールがあります。このおばあちゃんの場合、妻として母親として生活していた頃への想いが強く、毎日の家事をしなければならないという強迫観念に近いものがあったのだと考えられます。

その気持ちを否定しないで尊重していくことで、「家族のため」という強迫観念を、「この人らのため」という想いに変換できたのです。

それにより、夕方の焦り、帰宅願望はなくなりました。

認知症の人たちの行動には振り回されやすいものですが、本人の中では、何かしら理由や意味があることがほとんどです。その部分を掴めたなら、対処できるケースは少なくありません。

このおばあちゃんは、とにかく人の役に立てていることが嬉しかったのだと思います。この後は、夕食の準備に限らず、いろんなことを手伝ってくれるようになりました。

逆立ちしながら!? 夜中に徘徊するおばあちゃん

どうしてなのか、毎晩、トレーナーをズボンのように穿くおばあちゃんがいました。

トレーナーの首の穴がお股のあたりにきますが、穿こうと思えば穿けないことはありません。逆にズボンを着ようとします。こちらは腕を通すのがやっとで頭からかぶることはできないにもかかわらず、そうしています。

その格好で夜中の2時や3時に廊下に出てきて歩いているので、逆立ちして歩いているように見えました。

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