「ストロング痛飲と市販薬乱用」にみる根深い問題 「ストロングはドラッグ」と警鐘した医師に聞く
東洋経済オンライン / 2024年3月3日 7時0分
──どういうことでしょうか。
それを説明するには薬物乱用の変遷をざっと振り返る必要がある。
昭和30年代の後半、ハイミナールという市販睡眠薬の若者による乱用が問題となった。これは国の規制ののちに販売中止となった。その後、昭和40年代から流行ったのがシンナーだった。
新宿駅(東京)周辺に集まった若者集団のフーテン族が、「ラリる」ためにハイミナールの次に使ったのもシンナー。私の中学生時代を振り返っても、同級生の半分くらいはシンナーを1回はやったことがあるという感じだった。
いたちごっこの末に「危険ドラッグ」
販売行為の規制などでシンナーの乱用が減ってきて、次に来たのが、ヘロインやコカインの仲間のような成分が入っていた市販薬の一気飲み、そして覚せい剤をあぶって使うブームだった。1980年代後半や1990年代のことだ。
2000年以降になると、大学生が大麻所持や売買で逮捕される事件が続いたことで取り締まりが強化された。そうすると大麻に似たものとして脱法ハーブが出てきた。さらに危険ドラッグが登場した。規制や取り締まりとのいたちごっこを繰り返すうちに、中身がどんどんやばくなった。
危険ドラッグの規制を強化する改正薬事法(現・医薬品医療機器等法)で、販売規制などを行い、店舗経営が成り立たないようにして販売店舗を一掃した。それが鎮まったと思ったら、今度は市販薬のオーバードーズ問題が来た。
──入れ代わり立ち代わり、新たな薬物が問題になるんですね。
オーバードーズされる市販薬にも、危険ドラッグと同じように規制がかかりはじめた。
乱用依存のおそれがある成分を含有する市販薬に関しては今、1人1箱までなどと店頭で販売個数制限をしている。だが、販売個数制限をすると依存者は、規制がノーマークの別の市販薬へ移るだけだろう。
今から100年ほど前、アメリカでは禁酒法の時代にヤミ酒が横行した。質の悪い蒸留酒を飲んで失明する人が続出した。これは規制の功罪。すべての医薬品や嗜好品に共通する話だと思っている。
──いたちごっこから抜け出すには?
「薬に依存せざるを得ない人たちをどう支援していくか」という観点を、薬物政策に入れることだろう。今はそこが抜けている。
オーバードーズしている子たちは、親による虐待、学校でのいじめ、性被害など過去のつらい記憶を忘れたい、落ちこんだ気持ちを紛らわせたいというときに薬に手を伸ばしている。ストロング系で酩酊している子たちも同じだ。
薬物政策に欠ける「人」の議論
この記事に関連するニュース
-
「トー横」に集まる若者たち、その思いを伝える新聞を作りたい
毎日新聞 / 2024年7月3日 8時0分
-
医薬品の販売規制案にドラッグストア反発の事情 市販薬のオーバードーズ問題に有効な規制とは
東洋経済オンライン / 2024年7月2日 12時0分
-
OTC販売支援ツールに新機能「乱用防止のためのゲートキーパー機能」を実装!
PR TIMES / 2024年6月25日 14時15分
-
2府5県、薬物規制で連携強化 近畿39機関、大津で会合
共同通信 / 2024年6月13日 16時30分
-
「心配してもらうことで愛されていると実感したい」 若者に広がるオーバードーズ 依存症抜け出す鍵は「自分だけじゃない」
RKB毎日放送 / 2024年6月7日 18時32分
ランキング
-
1「楽天ブラックカード」これまで招待のみだったが、申込受付を開始 特典は?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月5日 13時7分
-
2株高なのに円安の恩恵が広がらないのはなぜか 岸田政権の大きな政策ミスを教訓にできるか
東洋経済オンライン / 2024年7月6日 9時0分
-
3知っていたらもっと早く仕事を変えたのに…65歳以上も働き続けることで減額されてしまう「年金の落とし穴」
プレジデントオンライン / 2024年7月5日 9時15分
-
4愛・地球博から約20年“夢の道路の続き”ついに動く 「名古屋瀬戸道路の“側道”」東名の南側へ
乗りものニュース / 2024年7月6日 8時12分
-
5ラーメン業界の革命児「一蘭」幹部に聞く 最高益をたたき出した「3つの要因」
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月6日 11時25分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)