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「ストロング痛飲と市販薬乱用」にみる根深い問題 「ストロングはドラッグ」と警鐘した医師に聞く

東洋経済オンライン / 2024年3月3日 7時0分

日本の薬物政策の特徴は、もっぱら薬というモノに対する規制や制限に注力している点だ。市販薬のオーバードーズ問題をめぐる足元の議論も、製薬会社の人や薬学の研究者など薬に関わる人たちで行われている。

私の元には、肝臓を壊して黄疸が出るまでオーバードーズを連日続けたような子も来る。しかし、そのような薬に手を出さざるを得ない子たちの支援をどうするのかという「人」についての議論がなかなか上がってこない。

ストロング系も市販薬も、自殺願望のある若者が使うようになっている。その人たちをどう支援するのかを議論しないと、いつまでもいたちごっこ。この状況にそろそろ終止符を打たないといけない。

──社会的責任として企業が行えることはないのでしょうか。

企業は本能的に利益を追求する集団。許認可する国が手綱を握ることが必要では。ハイミナールのときは国が医薬品販売業者に対する取り締まりを強化した後、販売停止に至った。

セルフメディケーション推進のために市販化された薬には、注意すべき成分が入っていることがある。多くの人は、市販薬を「処方薬より効き目が弱いけれど副作用も少ない」と思っているはず。でも医者からすると、そうではない薬が少なくない。

また、こうした薬は乱立するドラッグストアやネット販売でいつでも手に入るようになった。市販薬に誘導する政策は本当に国民の健康を守っているのかという、根本的な疑問に突き当たってしまう。国民の健康に資するかどうか、慎重に検討する必要がある。

ストロング系は飲酒文化を壊した

──他方でストロング系は先生のような警鐘が届いたのか、アサヒビールのように新規販売をやめる流れが強まっています。

実は啓発の難しさを考えさせられた。ストロング系の危険性を警鐘すると、その危険性に関心を持つ層も一定数いる。自傷行為の一環としてあえて手を伸ばす人たちだ。本当に難しい。

酒類メーカーの方たちには、度数も大事だけれど、お酒を介してどのような「文化」を売るのかを改めて考えてほしい。ストロング系は飲酒文化を一部壊したという気がしている。おいしい食事とお酒を楽しむというのではなく、ドラッグとして飲むという形にしてしまった。

私はお酒を絶対悪としてはとらえていないし、生活を豊かにするところもたくさんあると思っている。そういうお酒の売り方をぜひお願いしたい。

兵頭 輝夏:東洋経済 記者

緒方 欽一:東洋経済 記者

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