JR東日本「水素電車」2030年度導入へ残る課題 安全面は問題ないが、営業仕様や運行区間は?
東洋経済オンライン / 2024年3月4日 6時30分
2月28日、お昼時のJR鶴見駅ホーム。見慣れた青い色をした2両編成の列車が出発すると入れ替わるように、やはりブルーの列車がやってきた。ただ、日常的に走っているE131系とは形や色が少し違う。この車両はJR東日本が開発した水素ハイブリッド電車FV-E991系「HYBARI(ひばり)」。水素燃料電池と蓄電池を使って走る次世代の車両だ。この日、走行試験の様子が報道公開された。その物珍しさにホームにいた客たちがスマホで写真を撮影していた。
【写真28枚を見る】JR東日本が開発し、鶴見線や南武線で試験走行を行っている水素ハイブリッド電車FV-E991系「HYBARI」。その車内はどうなっている?
CO2排出ゼロの水素ハイブリッド
国は2050年までにCO2などの温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現を目指す。鉄道は環境にやさしい交通モードとして知られるが、非電化区間を走るディーゼル車両は走行時にCO2を排出する。電気で走る電車も、火力発電所の発電時にCO2が発生するため無縁ではない。そのため、鉄道各社はCO2削減に向け各社各様に動き出している。
JR東日本の取り組みの1つが、水素ハイブリッド電車の開発である。水素をエネルギー源とする燃料電池の電力とバッテリーの電力を主電源としており、トヨタ自動車の燃料電池の技術や、日立製作所の鉄道用ハイブリッド駆動システムの技術も活用する。車両を製造したのはJR東日本の子会社・総合車両製作所。車両の製造価格は非公表だが、実証実験のランニングコストも含めた開発費は約40億円という。
これまでもJR東日本は蓄電池電車のEV-E301系、ディーゼルハイブリッド形式で走行すると同時に排気ガス中の有害物質を低減するシステムも取り入れたHB-E210系などの環境配慮型車両を開発し、営業運転を行っている。ただ、ディーゼルハイブリッド車両はCO2排出がゼロになるわけではないし、蓄電池電車は1回の充電で走行できる距離が30km程度と短い。これに対してひばりはCO2を排出せず、航続距離も140kmと長い。
JR東日本は2006年ごろにも燃料電池ハイブリッド車両を開発していた。しかし、そのときは客を乗せない想定で、正確に言うと旅客車両ではなかった。それに対して今回のひばりは客を乗せる電車として製造している。そのため、車内には普通の車両と同じ座席や吊り革が設置されている。
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