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ゴールデンカムイの「カムイ」はいったい何なのか 大ヒット漫画を通して、アイヌ文化を分析する

東洋経済オンライン / 2024年3月5日 13時0分

22巻219話には、ミソサザイという小さな鳥が出てきますが、これは熊が近くにいると、チャㇰチャㇰと騒ぎ立てて、そのことを人間に伝えるのだと言われています。同じ小鳥でも、23巻228話にはシマエナガという鳥が登場します。アイヌ語ではウパㇱチㇼ「雪の鳥」と呼ばれ、これが群れをなしてやって来ると雪が降ると言われているそうです。

ということで、雪の到来を告げるのが役目ということになりますが、漫画の中でけがをして杉元に助けられたシマエナガのウパㇱちゃんは、雪山の中で道に迷い空腹に負けた杉元(動物を殺すのが嫌い)に、羽をむしって焼かれてしまいます。

涙ながらにウパㇱちゃんを食べようとしたところで、アシㇼパの声が聞こえて杉元が号泣するという場面でしたが、アシㇼパだったら、人間に食べられるのが彼らのヤクなのだから、感謝してお礼を言えばいいんだと言うかもしれませんね。

この「カント オㇿワ~」という言葉で重要なことは、現代の私たちが取るに足らないようなものとして、追い払ったり駆除したりするような存在に対しても、かつてのアイヌの人々はそれらがこの世界にいる理由を考えてきたということでしょう。

バッタの大量発生をどう捉えるか

12巻115話には飛蝗(ひこう)の話が出てきます。アイヌの習慣やら北海道の自然などに妙に詳しい尾形の解説によると、飛蝗というのは「洪水やら何やらで条件が重なると」バッタが大発生することで、「移動した先々では農作物はもちろん、草木は食い尽くされ、家の障子や着物まで食われる」という恐ろしいものです。ここまで行かなくても、バッタというのは昔から農作物を食う「害虫」というのが、和人の見方です。

しかし、カムイが自らの体験を語るという形式の、神謡と呼ばれる物語の中にはバッタを主人公とするものもあり、そのひとつでは、人間の娘がバッタを粗末に扱ったせいで、その村の作物が全滅するという話になっています。バッタはむしろ畑を見守るカムイであり、それをヤクとして畑にいるのだから、少しぐらい作物をかじったからと言って腹を立てるなということでしょう。

12巻114話で、飛蝗に襲われたキラウㇱは「姉畑支遁(あねはたしとん)がやった行いを、まだ許さんというのかッ」「あれだけ丁寧に送ったというのに、俺たちを飢えさせるつもりかッ。カムイたちよ !」と、天に向かって叫んでいます。これは、バッタの群れが襲ってくるのを、動物たちに非道なことをした脱獄囚の姉畑支遁への怒りと見ているわけであり、バッタが魔物であると考えているわけではありません。

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