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「半導体のプロ」坂本幸雄氏はなぜ中国に賭けたか 「いずれ中国のIC微細化は限界迎える」と予見

東洋経済オンライン / 2024年3月5日 7時50分

答えは「現在の技術の延長線上にいる限り、中国のIC微細化にはいずれ限界が来る」だった。坂本氏は中国企業における自らの役割について、いつか起こる可能性のある技術のパラダイムシフトに対応できるよう、経営基盤を固めることだと考えていたようだ。こうした坂本氏の見立ては、筆者が中国の半導体産業を観察するうえで非常に参考になった。

坂本氏はスウェイシュアでも同じ思いで仕事をしていたらしい。筆者が2023年5月、講演依頼のメールを送ると、「今はベルギーにいるので帰国後に調整しましょう」との返事があった。

半導体でベルギーといえば、IC製造技術の世界的な研究機関imec(アイメック)が頭に浮かぶ。米中ハイテク摩擦や企業秘密に直結しそうなのであえて確認しなかったが、スウェイシュアでも使える技術を探りに行ったのではないか。

帰国した坂本氏からは「この年になると17時間のフライトは疲れますよね」とのメールが入った。坂本氏はかねて海外出張もエコノミークラスで往復し、経費を少しでも節約することを経営者としての信念としていた。ベルギー往復もエコノミーの乗り継ぎだった可能性がある。当時75歳の身体には大きな負担だっただろう。

日本にとって中国ハイテクの台頭は安全保障上のリスクでもあり、中国企業に協力する人を「裏切り者」扱いする向きがあるのも理解できる。しかし、坂本氏は個人の損得ではなく、経営者としてのプライドを賭けて中国に身を投じていた。筆者には責めることができなかった。意見交換できる日が二度と来ないのは残念で仕方がない。心からご冥福をお祈りする。

山田 周平:桜美林大学大学院特任教授

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