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家族社会学者が語る「多様化する結婚のカタチ」 今や「個人化の時代」で「選び」続ける人生に

東洋経済オンライン / 2024年3月6日 18時0分

これを「個人化の時代」と定義することができます。

「個人の自由」はストレスにもなる

「個人化」とは、人々の個人主義が極まった、ワガママな状態とは異なります。社会学で言うところの「個人化」とは、あらゆる物事(結婚するかしないか、離婚するかしないか、卒婚するかしないかなど)について、「選択が個人に委ねられた状態」のことです。

地域コミュニティや親戚が「あなたはこの人と結婚しなさい」と強制したりする(あるいは、勧めてくれる)こともなく、結婚しようが、未婚だろうが、離婚しようが、社会的サンクション(制裁)が下りるわけではない。

あらゆることが「個人の意思」に委ねられた結果、人々は「自分で選ばなくてはならない」状態に恒常的に晒されるようになったのです。それは一見、喜ばしいことのように思えますが、実はかなりの心的ストレスを生じさせることも明らかになっています。

例えば、自分が同性愛者であることをカミングアウトするかしないかも、現代社会では「個人の選択」に委ねられます。半世紀ほど前は、欧米では「病気」や「犯罪」として取り締まる状況もあったので、「隠し通す」面がありました。

しかし今は、そうした性的マイノリティに関するすべてのことも、決定や判断、選択肢は「個人の自由」に委ねられています。葛藤する心のうちを、誰に、どこまで、どんな手段で、どんなタイミングで告知するか、個々人が悩み、一つひとつ決断を下す必要が生じています。

同様に、半世紀前は「男は仕事、女は家事育児」が基本形で、多くの人、特に男性は悩む必要もなかった「結婚生活」も、今は「専業主婦(夫)か、パートやアルバイトで働くか、正規雇用で働くか」など、多様な選択肢が考えられます。

それはつまり、夫と妻で、両親と義理の両親で、親戚や友人とで、それぞれ思い描く「結婚後の生活」に大きな齟齬が生じやすく、トラブルや諍(いさか)いも生まれやすくなったと言えるのです。

夫の側は「妻は結婚したら家庭に入り専業主婦になるのが当然」と思っているのに、妻は「女性も一人前に働くのが当然」と考えているかもしれません(最近は、逆のケースが増えているようですが)。

夫の両親は「嫁が介護をするのが当然」と思っているが、妻の両親は、「老後は介護施設が妥当」と思っているかもしれないのです。

「正解」が一つではなくなった時代、人々は常に「取捨選択」を迫られ、「周囲とのすり合わせ」や「自分の納得感」に対して、努力が求められるようになりました。 そうした現代に生まれ育った世代を、私は「個人化ネイティブ世代」と名付けています。

揺らぐ「結婚」の定義

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