東大日本史「同じ問題」が数年越しに再出題の衝撃 いつどんな問題を出してくるかわからない
東洋経済オンライン / 2024年3月6日 8時0分
(1983年度・第2問)
今度は答えのない問いです。ここで言う「二つの疑問」とは、一つは、中世には天皇の力が弱くなったにもかかわらず滅びることがなかったのはなぜか? もう一つは、鎌倉時代にのみすぐれた宗教家が輩出したのはなぜか?です。
言われてみればたしかに疑問に思うでしょう。とはいえ、それを「日本の歴史学がいまだ完全な解答をみいだしていないものであると思われる」と断ったうえで、入試問題として出題する意図は何なのでしょうか。
ちなみに、本問で引用されていた文章というのは、網野善彦『無縁・公界・楽』の一節です。歴史に詳しい方であるならば、網野氏の文章を入試問題に用いるということの“ただ事ならなさ”もご理解いただけると思います。要するにすべてが「攻めすぎ」なのです。
さすがに近年の問題は少し大人しくなってきたように感じますが、東大日本史はいつどんな問題を出してくるかわからないので心するようにとは、受験生に伝えているところです。
歴史を「覚える」から「考える」へ
こうした「攻めた」問題を通して東京大学が受験生に求めるのは、端的に言えば「考える」ことなのだと思います。先にも述べたとおり、東大日本史では知識のみを問う空欄問題や○×問題が一切出題されません。人名や年号を覚えるだけで満足するのではなく、時代の大きな枠組みや史実どうしの関係を考えて理解することが求められるのです。
それがよくわかる実例として、例えば、次の問いのなかには「考える」要素が盛り込まれています。
〈問題〉
護良親王は、鎌倉後期に絶大な権力を振るった得宗(北条氏嫡流)を、あえて「伊豆国の在庁官人北条時政の子孫」と呼んだ。ここにあらわれた日本中世の身分意識と関連づけながら、得宗が幕府の制度的な頂点である将軍になれなかった(あるいは、ならなかった)理由を考えて4行以内で述べよ。
(1997年度・第2問)
鎌倉幕府の将軍は、3代実朝で源氏の血統が途絶え、以降は摂関家・天皇家から迎えられた(摂家将軍・皇族将軍)ことは、高等学校で日本史を学んだ人、趣味で歴史に親しんでいる人ならよく知っていることでしょう。
幼少の将軍をお飾りとして立てることで、頼朝の妻である政子を出した北条氏が執権として実権を握ったことも、高校日本史では必ず教えるところです。北条氏、とりわけその嫡流である得宗は、他の有力御家人を排除しながら権力を独占しました。それにもかかわらず将軍とならなかったのはなぜか?という問いは、「高等学校で日本史を学んだ誰もがいだく疑問」と言えなくもないでしょう。あるいは、当然のこととして受け入れていたために、改めて問われると答えに窮するかもしれません。
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