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東大日本史「同じ問題」が数年越しに再出題の衝撃 いつどんな問題を出してくるかわからない

東洋経済オンライン / 2024年3月6日 8時0分

詳しい解説は拙著『歴史が面白くなる 東大のディープな日本史 傑作選』(KADOKAWA)に譲りますが、問題文で言う「日本中世の身分意識」が手がかりとなります。中世の武士は天皇につながる血筋の尊いものを棟梁として仰ぐという、言わば「血筋のピラミッド」に縛られていました。源氏は清和天皇、平氏は桓武天皇を祖としますね。そうした中で、得宗は「伊豆国の在庁官人」、つまり田舎の武士にすぎません。自分たちと出自の変わらない得宗を、他の御家人が将軍として認めることはなかったでしょう。

また、護良親王(鎌倉幕府の倒幕を目指した後醍醐天皇の皇子)が「伊豆国の在庁官人」呼ばわりしているところからは、公家の人々の得宗に対する蔑んだ意識がうかがわれます。将軍(征夷大将軍)とは朝廷が任命する官職であり、「血筋のピラミッド」の底辺に位置する得宗を取り立てることは許せませんでした。つまり、得宗は、御家人からも朝廷からも認められず、「将軍になれなかった」のです。

どちらが答えるべき問いかという「問い」

ところで、問題文にはカッコつきで「(あるいは、ならなかった)」とあります。実は、こちらの問いに答えた〈別解〉も、予備校界では流通しています。

簡単に言うと、得宗は、天皇に任命されるという征夷大将軍の直臣としての制約を避け、あえて将軍とならないことでフリーハンドの立場を確保しようとした、という趣旨です。しかし、そう言えるのは将軍になることが可能な場合であって、そもそも「なれない」のに「ならない」理由を答えるというのは気が利いていません。

私は、この問題はどちらを答えても良いというのではなく、どちらが答えるべき問いか、ということも含めて受験生に問いかけていたのだと考えています。そのように、どこまでも抜け目なく「考える」ことを求める点にこそ、東大日本史の面白さも、学ぶべき価値もあります。

相澤 理:厚胤塾

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