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日本の「絵本」は世界に通じるコンテンツになる エフェクチュエーション理論で読み解く(後編)

東洋経済オンライン / 2024年3月6日 10時30分

外部のデザイナーやメーカーと何度も打ち合わせを重ね、相手の意見やアイデアを引き出しながら、ファンの期待を超えるものを作る。時には作家や出版社の側から、もっとこんなものを作ったらよいのではないかと提案されることもあったといいます。そこにあったのは、一般に効率が良いとされる分業とは一線を画すコ・クリエーション(共創)でした。

目標から手段を逆算する考え方では、誰が顧客で誰が競合かを識別して市場の機会や脅威を予測します。これに対して優れた起業家は、コミットメントを提供してくれそうなあらゆるステークホルダーと交渉し、互いにとって意味のある目標を共創しながらパートナーシップを構築する傾向があります。

これが、エフェクチュエーションにおける「クレイジーキルトの原則」です。

もともとあった手持ちの手段(手中の鳥)に、パートナーがもたらす新しい手段(資源)が加わることで、「何ができるか」も変わってきます。このようにエフェクチュエーションのプロセスを拡大しながら何度も繰り返すことにより、新たな事業や新たな市場が創り出されることになります。

不確実性に対処するパイロットの存在

まだどこにもない市場を創造したり、自社にとっては未経験の事業を立ち上げる場合、思いもよらない出来事やトラブルは避けられません。そうした事態をコントロールするのが、エフェクチュエーションにおける「飛行機のパイロットの原則」です。

オートパイロットシステムを搭載した飛行機にも必ずパイロットが搭乗しているのは、不測の事態に対処するためです。同様に起業家も、平時はさまざまな指標を通じて、また自身の目や足で現況を常に把握します。そして、何らかの予測しえない事態に遭遇した場合は、しっかりと操縦桿を握って状況をコントロールしようとします。

「EHONS」においてプロセス全体をコントロールしたパイロットは、言うまでもなく篠田氏です。最初はわずか2社だった協力出版社は10社、グッズのモチーフとなった絵本は60冊にまで、この3年間で増えました。

さまざまな立場や思いを持ったステークホルダーのコミットメントを引き出しながら、「できること」に集中して意味のある行動につながる意思決定をし続けた結果といえるでしょう。

コロナ禍という想定外の出来事をテコとして活用した「レモネードの原則」も、パートナーの獲得を通じて新たな可能性を共創していった「クレイジーキルトの原則」も、篠田氏がしっかりと操縦桿を握り、コントロールし続けたからこそ生まれたものです。

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