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中国で「空前の整形ブーム」が起きているなぜ 今後の消費のカギを握る「中女」とは何か

東洋経済オンライン / 2024年3月6日 11時30分

その一例は日本とも関係している。今年春節の2月10日~18日の中国映画興行収入ランキングでは、『热辣滚烫』は28.54億元(約570.8億円)でナンバーワンを取った。大ヒットしたスーパーマリオも世界興行収入5日で500億円を達成したので、『热辣滚烫』はとてもヒットしたといえる。

実はこの映画、日本アカデミー賞などを受賞し、安藤サクラが主演した『百円の恋』のリメイク版である。引きこもりで取り柄が何一つなく、周りに翻弄され、自己肯定感も低い30代の主人公が、ボクシングのコーチに励まされ、50キロも痩せ、強くなりやっと本当の自分を見つけるというストーリーだ。

ストーリー自体も、主演女優のダイエットの話も、「中女」たちの心に響き、興行収入につながったのである。「強く生きて美しい」「50キロも痩せられたなんて、すごい根性」「世の中、こんなどん底に落ちたとしても、他人の言葉に呪われないよう、自分を肯定して生きていこう」など反響が多かった。

こうした中女たちは、さまざまな消費ポイントを作り出している。例えば、自分の親世代との価値観の差が激しいことで親子関係に悩まされ、なかなか真の自分を見いだせなかった、という女性たちは、そのトラウマを乗り越え、「もっとよい自分」を見つけるため、心理学の本に引き寄せられている。実際、『ヒキガエル君、カウンセリングを受けたまえ。』といった書籍が話題になっている。

また、自分の母親は子供や家族のためにすべてを貢ぎ、個人の好みや消費を最後の最後に回していたが、今の自分は親になったとしても、中国の茶道、書道に没頭したり、ジムに通ったり、ハンドメイドの教室に通ったりしている。親になっても、「自分」は今まで以上にケアしたいと思っているのだ。

美容整形の話に戻ると、自称「中女」たちは、「何もしなくていいうちに予防として注射」、または「まだなんとかできるうちに、これ以上ひどくならないうちにプチ整形をしておく」と思うようになり実践する。「すっぴんでもかわいい」のが理想のため、例えば注射やレーザー治療をスキンケアの一部として取り入れている。

高い基礎化粧品より、プチ整形

その結果、それまで使っていた資生堂の「クレ・ド・ポー ボーテ」など高級化粧品をやめ、カネボウや中国国産ブランドのより安価なスキンケアに変更し、美容整形の費用とバランスを取ろうとしているのである。ただし、治療の基準もあくまで自分軸だ。

「しわが多いと夫に文句言われているから来た」と他人目線の理由より、「しわが多少あってもいいと思うが、フェイスラインが気になるので改善したい」といった、自分の価値観や美意識に沿ったケアを希望する人が多い。

もちろん、中国の美容整形業界はまだまだ発展途上であり、リスクやトラブルも多数発生しているし、20代後半になると、中国人女性が全員整形したくなるとはかぎらない。

ただ、美容整形や映画、書籍のトレンドや消費動向から、中国女性の「自我意識」が目を覚ましていることは間違いない。今後、日本企業が中国市場に進出する際の、新たな切り口として、注目していくべきだろう。

劉 瀟瀟:中国若者富裕層ビジネスコンサルティング 代表

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