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ゆうちょ銀行、「運用のプロ」が社長就任する意義 初の内部昇格、200兆円の貯金はどこへ向かう

東洋経済オンライン / 2024年3月6日 7時40分

ゆうちょ銀行の池田憲人社長(右)と、4月1日付で社長に就任する笠間貴之副社長(撮影:尾形文繁)

ゆうちょ銀行は2月28日、8年ぶりとなる社長交代を発表した。

〔図解〕これまで金融庁や大手銀行などの「落下傘」社長が続いたゆうちょ銀行

池田憲人社長は3月31日付で取締役と社長を退任し、4月1日付で笠間貴之副社長が昇格する。約200兆円もの貯金を抱える巨大金融機関の舵取りを任されたのは、長年ゆうちょの運用部隊を率いてきた人物だ。

「中で見つめてきた人がいい」

「(外部登用ではなく、ゆうちょを)中で見つめてきた人がいいだろうと。指名委員会ではかなりの議論をした」。3月1日に開いた記者会見で、池田社長は社長人事の経緯をこう述べた。

2007年の民営化以後、ゆうちょは5人の社長を迎えてきた。いずれも国内の行政や金融機関、事業会社での勤務経験が長い。対照的に、笠間氏はゴールドマン・サックス証券などの外資系証券会社で債券や証券化商品の運用を担ってきた。

笠間氏がゆうちょに参画したのは2015年11月。当時、ゆうちょはゴールドマン・サックス証券やバークレイズ証券といった外資系企業から、株式や債券、デリバティブなど各部門の運用担当者を相次いで起用した。

「ゴールドマン・サックス証券時代の先輩が(ゆうちょに)入社し、『運用改革をするから、一緒に携わってくれないか』と誘いがあった」(笠間氏)。笠間氏を含めて当初7人だった外資系出身のトレーダーを、当時の長門正貢社長は「七人の侍」と称した。

外国証券・投信が国債残高を逆転

背景にあるのが、ゆうちょが推し進めてきた「脱国債」だ。銀行の名を冠しながら融資業務をほとんど認められていないゆうちょは、収益の大部分を有価証券運用に依存する。民営化当初は貯金の大半を日本国債で運用していたが、低金利政策で国債の利ザヤは潰れる一方だった。

そこでゆうちょは、ハイリスク・ハイリターンな金融商品の運用へと軸足を移す。民営化直後の2008年3月末と株式上場直前の2015年3月末における有価証券運用残高を比較すると、150兆円あった国債が3分の2に減った一方、残高がほとんどなかった外国証券や投資信託は30兆円超にまで膨らんだ。

2015年11月に株式上場を果たすと、ゆうちょ銀行はいっそうの利益成長を求められる。「侍」たちの引き抜きは、有価証券運用でさらなる収益を上げる必要に迫られる中で行われた。

「国内の金利低下に対応して、運用資産を日本国債からリスク性資産に大きくシフトしてきた。運用のパラダイムシフトと呼び、PE(プライベートエクイティー)などのオルタナティブ投資を含めて多様化・分散化してきた」と、笠間氏は語る。

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