「血糖値」の変動が大きい人に気づいてほしい真実 慢性的な高血糖でなくても注意が必要な場合がある
東洋経済オンライン / 2024年3月7日 18時0分
脂肪細胞が膨れると「新しい脂肪細胞」が生まれる
私たちには一人ひとり、体脂肪の最適値の範囲があり、自分の代謝系を正常に機能させるにはその範囲を守らなければならない。「個別脂肪閾値(しきいち)」と呼ばれるその範囲を超えると、代謝系は機能不全を起こし、2型糖尿病になる恐れがある。
私たちの体は、もしもに備えて肌の下に脂肪をたくわえる。この皮下脂肪は、ほかの器官や筋肉が必要としない余分なグルコースと脂肪を吸収し、断食や飢餓の際に使えるよう貯蔵しておける安全な場所だ。
脂肪細胞はエネルギーを取り込むにつれ、空気の入った風船のようにふくらむ。だが、風船は空気が入りすぎると破裂してしまう。脂肪細胞は大きさが「臨界閾値」に達すると、自らの身を守るためエネルギーの供給を受けつけなくなり、新たな脂肪細胞をつくり出してさらに多くのエネルギーを取り込もうとする。
新たな脂肪細胞をつくり出してエネルギーの負荷を分配する能力があるかどうかは、私たちの遺伝子によるところが大きい。
脂肪細胞が多い人ほど、代謝に異常が起きる前にたくわえる脂肪も多い。肥満気味でも、代謝的には健康な人とそうでない人がいるのはこのためだ。
また、体重は正常なのに2型糖尿病になる人がいるのも、やはりこれが理由だ──その人たちは、個別脂肪閾値を超えた状態になっているのだ。
脂肪細胞が大きくなりすぎて、自らの生命を守るためにインスリン抵抗性を帯びると、代謝機能に異常が生じる。
余分なグルコースを引き受けてくれる脂肪細胞が見つからなくなると、体は脂肪細胞のインスリン抵抗性を克服しようと、さらに多くのインスリンを送り出す。これは一時的に功を奏するが、脂肪細胞内に恐ろしい量の脂肪がたくわえられ、やがて酸化ストレスや炎症、さらに克服不能なレベルのインスリン抵抗性を引き起こす。
この時点で、脂肪細胞はきちんと働かなくなっている。脂肪細胞に酸化ストレスと炎症が発生することで、炎症を誘発するシグナル伝達分子が分泌され、それが全身に炎症をもたらす。
また克服不能なインスリン抵抗性によって、脂肪酸が血流へと漏れ出し、それが本来たくわえられるべきではない骨格筋や肝臓、膵臓にたくわえられてしまう(異所性脂肪)。
全身性炎症と異所性脂肪はそれぞれ、全身性インスリン抵抗性を引き起こし、そのせいで代謝が機能不全に陥る。
インスリン抵抗性と代謝機能不全は、最終的に体に激しい疲労をもたらす。その状態が長期にわたって続くと、その先に待っているのは……2型糖尿病の宣告だ。
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