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入学志願者の減少が止まらない「薬学部」の実態 人気復活のカギは就職先?「起業」する薬剤師も

東洋経済オンライン / 2024年3月7日 11時30分

都築氏が大学運営で最も大切にしているのは、薬学部生の多様な就職先や新たな活躍の場の確保だ。

一般社団法人薬学教育協議会の調査によると、6年制の薬学部を2023年3月に卒業した学生は9629人で、就職先は保険薬局が2758人、ドラッグストアの調剤部門が1894人、医療機関が1998人。薬学部生のほとんどは、保険薬局、ドラッグストアの調剤部門、医療機関のいずれかに就職していることがわかる。

薬学部生は、卒業後の進路を決めるにあたり、5年生のときに参加する病院・保険薬局での実習を参考にする。そこで薬剤師として働く意義ややりがいを見出し、就職先を決める学生がいる一方で、実習先の環境や業務になじめず、薬剤師になるモチベーションを下げる学生もいる。

「従来の就職先が合わない学生に、ほかの選択肢を提示できなければ、薬学部で学ぶ魅力を伝えきれない」というのが都築氏の考えだ。

実際に新たな道で活躍を始めた卒業生もいる。

起業を選ぶ薬剤師も出てきている

2017年に同大を卒業した高林拓也氏は、横浜薬科大学を卒業した保田浩文氏とともに、ドラッグストアで勤務する傍ら薬剤師の職能を生かせるビジネスを模索、2019年6月に株式会社HealthCareGateを設立し、「オンライン薬剤師」というサービスを開始した。

起業のヒントは青森県の医師がX(旧Twitter)でつぶやいた、「在宅医療の現場に処方箋のチェックをしてくれる人がほしい」という一言だった。

ドラッグストアでの経験から、薬剤師が持つ職能をさらに発揮すれば、医師の負担を減らせると考えていた保田氏は、すぐにダイレクトメールを送り、青森へ。医師のかばん持ちとして、在宅医療の現場を見て回った。

「青森の医師は、往診をしたり、処方箋を出したりするだけでなく、書類作成やほかの医療職との情報共有など、医師がやらなくてもいいような仕事も行っていた。そういった業務の一部を薬剤師が担うサービスを提供できれば、ビジネスになると気が付いた」と、保田氏は振り返る。

オンライン薬剤師は、在宅医療の現場と薬剤師をオンラインでつなぎ、これまで医師が行っていた患者情報の照会や処方薬の検討などを、薬剤師が代行するサービスだ。医師からは「診療に集中できる」と好評だ。

このような新しい視点を持つ学生を育てるためにはどうすればいいのか。

都築氏に聞くと、「国試合格のために机に向かって勉強するだけでは育たない、学生のうちに国内外の多種多様な他者と交流することが大事だ」と話す。

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