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優秀なはずの人が戦略を大きく間違える根本原因 日本人は忖度と強要の本当の怖さを知るべきだ

東洋経済オンライン / 2024年3月8日 10時0分

貨物船エルファロを沈没させた「古いやり方」とはどのようなものだったのでしょうか(写真はイメージ:shibugakky/PIXTA)

2015年にバハマ沖で沈没し、33人の全乗員が犠牲になった貨物船「エルファロ」。ベテランの乗員を揃え、近代的な装備を備えていたはずの彼らはなぜ命を落としたのか。

米海軍の原子力潜水艦「サンタフェ」の元艦長、マルケ氏は、その理由を、乗員チームが産業革命以来の古い仕事のやり方に従っていたからだ、と分析する。マルケ氏の近刊『最後は言い方』から、抜粋・編集してお届けしよう。

2015年9月29日火曜日の夜。貨物船エルファロはプエルトリコの首都サンフアンを目指し、フロリダのジャクソンビルを出発した。

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どちらのルートを進むべきか

そのころ、船の通り道となるバハマ諸島付近の大西洋で、熱帯低気圧「ホアキン」が勢力を強めていた。

翌朝、「ホアキン」はカテゴリー1のハリケーンに成長したと発表され、バハマの主要地域にハリケーン警報が発令された。「ホアキン」はのちに、1866年以降にバハマを襲った最大のハリケーンとなる。

ここで、エルファロの船長と船員には、進むべき航路について、2つの選択肢があった。

ひとつめの選択肢は、ジャクソンビルからサンフアンまで、まっすぐに進むこと。もうひとつの選択肢は、ホアキンの直撃を避けるために、迂回路をとることだ。

ひとつめの直進ルートをとった場合、サンフアンにより早く到着できるが、嵐の直撃を受けるリスクがあった。もう一方の迂回路をとった場合、嵐の影響は弱まるが、8時間ほど余計に時間がかかる。

出港の翌朝の水曜日の朝。エルファロの船長は直進ルートをとると決断し、嵐が直撃する側の航路を進み始めた。

この決断はどのように下されたのか?

慎重に検討されたものでないことは確かだ。エルファロの船内で、船長と一等航海士の話し合いはあったものの、彼ら以外は話し合いに参加するどころか、話し合いがあることすら知らされていなかった。

方向を確認せずに「続行」する恐さ

おそらく船長と一等航海士には、決断と呼ぶほどのことをしたという認識がなかったのではないだろうか。港を離れる前から、船長はいつもの直進ルートを使うとある程度心に決めていたのだろう。

話し合いの最初のほうで、船長は一等航海士に「今回は耐えるしかないな」と告げた。

これで決断は下された。決まりだ。

この話し合いで決まったことは、「計画を続行する」ということだけだ。直進ルートを選ぶべきかどうかではなく、直進ルートをどのように進むかが議題だったというわけだ。

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