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優秀なはずの人が戦略を大きく間違える根本原因 日本人は忖度と強要の本当の怖さを知るべきだ

東洋経済オンライン / 2024年3月8日 10時0分

これはまさに、産業革命期に誕生したやり方のひとつである「続行」だ。

「続行」することにとらわれてしまい、深く考えずに無駄な努力をし続ける人は多い。

のちに、その決断はよくなかったと判明すると、船長は「責任感の過熱」に陥った。つまり、一度決めたのだからという理由だけで、破滅を招く行動を最後までやり抜こうとしたのだ。

エルファロはなぜ、嵐にさらされる直進ルートを進み続けようとしたのか?

それが早く着くルートだったからだ。海上を進むだけではお金は稼げない。目的地に到着し、積荷を降ろして初めてお金を稼ぐことができる。

この理由から、商業船舶の船員は、誰もが「時計に従おう」とする。

時計に従っていると、人は時間のプレッシャーを感じてしまい、「時間内にやり遂げる」ことが目的化してしまう。

時計に従うことの最大のメリットは、集中力が生まれることだ。時間どおりに行動しなければという意識に駆られ、そのおかげでものごとをやり遂げられるようになる。

もちろん、それが本当にやり遂げる必要のあることなら、何の問題もない。だが、時間のプレッシャーはあらゆるストレスをもたらす。そのせいで自分の殻に閉じこもるようだと、視野も狭くなってしまう。

エルファロが直進ルートを進むなか、船長は複数の船員に向かって次のような言葉をかけている。

リーダーによる「強要」の言葉の力

「われわれは優秀だ」
「大丈夫なはずだ。いや、『はず』ではだめだ。大丈夫にするんだ」

さらには、新米の船員が「あらゆる天候の可能性」に言及しようとすると、からかうようにこう言った。

「おいおい。わかってないな。この船は方向転換しない。方向転換はありえない」

船長の言葉は、どんな犠牲を払ってでも「やり遂げる」と語っていた。この種の言葉は難攻不落で無敵だ。どんな懸念も表明できなくさせてしまう。そこには、こんなメッセージが込められている。

「この決断に疑問を差し挟むべきではない」
「われわれが進む道はもう決まっている」
「異議を唱えることも、もう一度説明を求めることも許さない」

船長がそうした言葉を使う動機は何だったのか? そもそも、リーダーの動機とは何か? まわりにいる人々に自信を持たせること? 彼らを作業に集中させること? 彼らを自分に従わせること?

ここでの船長のような発言は、読者の誰もが繰り返し聞いているだろう。それは産業革命期に誕生した「強要」だ。

この表現では露骨すぎるので、世間では「鼓舞」や「動機づけ」と呼ばれているが、この場面では、船長には、直進ルートをとるという決断にかかわっていない人々を決定に従わせる必要があったということが根底にある。

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