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「政府予想」「具体的数字」すら当てにならない理由 明確な数字ともっともらしい話は詐欺師の手口

東洋経済オンライン / 2024年3月8日 10時30分

「確度(アキュレシー)」と「正確性(プレシジョン)」は、よく混乱しがちだが、根本的に異なる概念だ。確度の高い測定ツールは正答に近いものを提示する。正確性の高い測定ツールは、詳細で矛盾のない回答を提示するが、それが正しいか誤りかどうかは関知しない。

2020年5月初旬、アメリカでの新型コロナウイルス感染症による死亡者の報告が比較的少なかったころ、トランプ政権は、政権内の対策委員会からの助言や、6月1日までに死亡者数が「20万人に達するだろう」と予測した専門家の意見に反し、公衆衛生上の制限を解除しようとした。ホワイトハウスは、独自の「キュービック」モデルを強調しその政策を正当化した。そのモデルは、1日の死亡者数が5月15日までに「ゼロになる」と予想するものだった。

トランプ政権でこのモデルを構築したのは、感染症の専門家でも疫学者でもなく、大統領経済顧問のケビン・ハセットだった。彼は、大量のデータをさまざまな形状の傾向線で表示できるマイクロソフト・エクセルの関数を試し、楽観的な予想になるまでそれをくり返したらしい。

キュービックモデルは2度、方向を変える。最初は高い数値を出し、その後下降し、そして上昇し、再び下降する。もしくは、低い値から出発し、上昇し、下降し、再び上昇する。曲線の始点で起こる事象によって、そのデータが終了し外挿が始まる方向性が決まる。

すでにご承知のとおり、「パンデミックはまもなく終焉する」という、ハセットが立てた予想は、間違いだった。2020年5月半ば時点で、アメリカでは毎日約1500人の死亡者数を記録していた。

根拠のない正確性が、判断を鈍らせる

極端に楽観的な予想を立てたのはトランプ政権だけではなかった。イリノイ大学は、2020年の秋学期が始まる前、ある「最悪の場合」とする予想を立てた。それはアーバナ・シャンペーン校のキャンパスにおいて、感染者数は常に100人以下で、数週間以内に1桁に下がり、学期全体で合計約700人が感染するというものだった。最悪の事態を予想する人がいるときはいつも、慎重になるべきだ。ほぼどんなときでも、それよりもさらに悪い事態というのは存在するからだ。

実際は、そのキャンパスでは3923人の感染が11月下旬までに確認され、平均で1日当たり40人の新規感染者がいたことになる。ホワイトハウスのキュービックモデルとは異なり、イリノイ大学のモデルは数学的に厳格だった。しかし、キュービックモデル同様、大学が出した結論が土台としていた初期の想定には欠陥があった。

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