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「世界一危険な道」をTVマンが歩いてみた【中編】 「心臓に悪すぎる…」「最悪、命は…」驚きの世界

東洋経済オンライン / 2024年3月10日 11時51分

もし、ニューデリーから直接ここに来ていたら高山病になっていたに違いない。 あのギックリ腰にも意味があったのだ。

しばらく道を進むと急に車のスピードが落ち、止まった。運転手が助手席の男と何やら話している。

何があったかと注意して前方を見ると、道が崩れ、川の水がその上を流れている。

道の一部が突如、消えてしまったのだ。

おそらく豪雨が降り、川が増水してしまったのだろう。

山の天気は女性の感情のように変わりやすいと聞いていたが、ヒマラヤの大自然は機嫌が悪いと、いとも簡単に人間の作った創造物を破壊するらしい。

ヒンドゥーの女神の気性の激しさ

なぜか、インドの神様ガネーシャの由来を思い出した。

破壊と創造の神シヴァの妻パールヴァティーは、とても心優しい女神様。

ある日、彼女はお風呂に入るため、息子ガネーシャに玄関の番をさせた。その間にシヴァ神が帰宅するのだが、ガネーシャはシヴァを知らず、家に入ることを拒んだ。

これに怒ったシヴァはガネーシャの頭を切り落としてしまう。 パールヴァティーはこれを知ると激怒し、シヴァに息子を元通りにするよう要求する。妻の怒りは凄まじく、もしシヴァが言うことを聞かなければ、「世界を破壊する」と脅す。

シヴァは彼女の怒りを静めるため、一番初めに出会った象の頭を持ってきてガネーシャを蘇らせたのだ。

我々がよく知る、人間の身体に象の頭をもった神、ガネーシャの誕生秘話である。

そのとき、 脳裏に浮かんだのは、恐怖の夫婦喧嘩の話でも、ガネーシャの誕生秘話でもなく、「世界を破壊する」と脅すパールヴァティーの「気性の激しさ」だ。ヒンドゥー教の最高神のシヴァでさえ、彼女の怒りに脅威を覚えた。

俺は、道を壊した山の神はきっと女性だろうなと思った。

ちなみに、ヒンドゥー教の前身であるバラモン教の聖典「ヴェーダ」には自然崇拝が伝承されている。

全員で車を降り、道の上を流れる川を見に行った。

小石を投げてみたら、水しぶきが小さくそのまま吸い込まれていく。結構深く、流れが速いことがわかった。

ここに来るまでの一本道は、数時間、分岐点らしきものがなかったはず。

おそらく回り道をするルートはない。

「スピティへの旅をあきらめなければならないかも」と思い始めたとき、運転手が「車に乗れ」と指示を出した。そして、ゆっくりとアクセルを踏み、前方に進んで行ったのだ。

最悪、命はなんとかなるだろう…

俺は彼の長年の経験を信じることにした。

せっかく、ここまで来たのだから、先に進んでみたいし、スピティがどんな場所なのかを見てみたい。

車がズルズルと川下に流されても、最悪、命はなんとかなるだろう。

川の増水で水没してしまった道を通る(写真:筆者撮影)

*この記事の前半:「世界一危険な道」をTVマンが歩いてみた【前編】

*この記事のつづき:「世界一危険な道」をTVマンが歩いてみた【後編】

後藤 隆一郎:作家・TVディレクター

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