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死んだアフリカ象の腸に潜った獣医が「見たもの」 体長7メートル、臓器もスケールが全然違った

東洋経済オンライン / 2024年3月10日 9時0分

獣医学部の先生と学生、動物園のスタッフ総勢十数名で行ったアフリカゾウの解体(写真:ニングル/PIXTA)

みなさんは「獣医病理医」と聞いて、どのようなイメージを持たれるでしょうか。

獣医病理医の中村進一さんが専門にしているのは、動物の体から採ってきた細胞や組織を調べて、「病(やまい)」の「理(ことわり)」を究明すること。要は「なぜ病気になったのか、どうやって死んだのか」を調べることを生業としています。

そんな中村さんの著書『死んだ動物の体の中で起こっていたこと』(ブックマン社)から、動物の生と死をめぐるエピソードを3回に渡って紹介します。

アフリカゾウを解体しに行くぞ

「おい、アフリカゾウを解体しに行くぞ」

【調査でみる】亡くなったペットに対して、後悔していることはありますか?

ぼくがまだ獣医学部の学生だった頃のことです。関東地方のサファリパークでアフリカゾウが亡くなったということで、当時大学に非常勤講師として来ていた動物園の獣医師に誘われて、同級生たちと現地に向かいました。

すでに転倒による四肢の損傷が死因だと診断がついており、病理解剖というよりは骨格標本を作製するための解体が主目的でした。

参加は任意でしたが、獣医師を目指すぼくたちに、「最大の陸上動物の解剖」を経験させようという意図も先生にはあったのだと思います。

身近でたくさん飼われているイヌやネコならいざ知らず、アフリカゾウの解剖ともなると、獣医師でもなかなかできない貴重な体験です。学生ならばなおさら。ぼくたちは期待に胸を膨くらませていました。

そして膨らんでいたのは、アフリカゾウも同じでした。

飼育場はブルーシートで簡単な仕切りが設けられ、亡くなったアフリカゾウはその中に安置されていました。

通常なら動物の遺体はバックヤードや解剖用の部屋に運ばれ、そこで解剖されます。しかし、あまりの巨体ゆえに重機を使ってさえも移動が困難だったため、死亡したその場で解剖を行うことになったのです。

アフリカゾウのスケール感に圧倒

横たえられたアフリカゾウを、先生と学生、そして動物園のスタッフ総勢十数名で取り囲みます。

当時、大型の動物では600キログラム程度のホルスタイン(牛)しか解剖経験がなかったため(それでも十分な大きさですが)、その10倍近い体重のアフリカゾウのスケール感には圧倒されました。

サイズがサイズですから事故に注意し、お互いに声を掛け合い、リーダーである先生の指示に従って作業を開始します。

体長およそ7メートル、その存在感に気圧されつつも、重機で四肢を持ち上げてもらいながら、ほかの動物を病理解剖するときと同じ手順でまずは開腹していきました。

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