企業がこぞって「スポーツ選手」の支援をする本音 広告過多時代に、新たなファンを生み出す
東洋経済オンライン / 2024年3月10日 19時0分
その点、スポーツチームなどのスポンサーは広告感が薄く、消費者に嫌がられることなく商品や企業を知ってもらいやすくなります。またチームや選手を応援する中で、スポンサー企業や製品について自然と口にしていることも増えるのではないでしょうか。
もう一歩踏み込むと、広告手段を変えることで消費者との関係性も変わります。
テレビCMなどは、企業が売り手で消費者が買い手という関係性です。広告を通じたコミュニケーションも企業側からの一方通行です。こうした広告に対して消費者は「一方的に押し付けられた」という気持ちを感じてしまい、さらに消費者がどう感じているかを確かめることが難しくなってしまいます。
一方、スポーツチームなどのスポンサーは、消費者と企業が同じ立場でチームや選手を応援する関係性です。立場や視点が同じであるため、消費者の中では、一緒のチームを応援する仲間意識が芽生えやすくなります。
企業を仲間と認知することで、チームや選手のみならずその企業も応援しようと考える人も増えやすくなります。応援者となった消費者は、個人として企業に興味を持つだけでなく、知人などに推奨したり、SNSで魅力を発信したりしてくれるかもしれません。
このように自発的に企業を応援する人を「アンバサダー」といいます。また、アンバサダーを増やし、彼らの積極的な情報発信を促す手法を「アンバサダーマーケティング」といいます。
スモールビジネスでも実践できる
アンバサダーは「大使」の意味を持つ言葉で、自治体などでは、その地域出身の芸能人などを親善大使として地域の魅力を発信しています。例えば宮城県仙台市では、芸人のサンドウィッチマンさんや元フィギュアスケート選手の羽生結弦さんを「仙台観光アンバサダー」として起用しています。
これもアンバサダーマーケティングの1つですが、芸能人など知名度や影響力がある人を起用することが必須ではありません。重要なのは企業(自治体の場合は地域)への愛や忠誠心で、それが自主的な情報発信の源泉ですので、その点さえ満たしていれば誰でもアンバサダーになれますし、芸能人をアンバサダーとするよりも多くの人に情報発信することもできます。
こうした芸能人やインフルエンサー以外によるアンバサダーマーケティングの具体例として、コーヒーなどの食品飲料を販売するネスレが展開する「ネスカフェアンバサダー」があります。
職場やコミュニティの代表者がアンバサダーとなることで、コーヒーを安価に楽しめることができるようになります。この場合、ネスレアンバサダーとなるのはごく普通の社会人ですが、アンバサダーを起点にしてネスレのコーヒーが広範囲の人々に普及することを期待できます。
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