老舗酒造メーカーが「ストロング系」に込めた思い コスパのよさが「心の拠り所」となる人もいる
東洋経済オンライン / 2024年3月10日 7時20分
他社の動向もあるが、ガイドラインで健康被害が明らかになっているにもかかわらず発売を続けるか否かについては考える必要がある。
飲酒については個人の裁量や判断も大きい。ガイドラインは1週間の摂取量を想定しており、9%を飲んだ翌日が休肝日なら2日間で4.5%と単純計算できる。飲酒ペースを毎日から2日に1回、3日に2回とか、そういうやり方で純アルコール量を超えないよう個人が判断して飲むようになるかもしれない。
そう考えるとストロング系だけをやり玉に挙げるのは、ちょっと乱暴かなと個人的には思う。
ビールも500ミリリットルのロング缶なら、純アルコール量は20グラム程度になってしまう。業務用の瓶ビールは「大人の義務教育(6・3・3)」なんて言われる633ミリリットルで、これは完全にアウト。最近は若い女性の間でテキーラが人気を集めているが、これも一発スリーアウトチェンジだ。この話を始めると、ぐちゃぐちゃになってしまう。
──ストロング系チューハイがなくなったら、酒類市場はどうなるのでしょうか。
度数の低いチューハイを2~3本買う人もいるだろうが、量が多くなると飲みきれない場合もある。ならばチューハイの素や焼酎を買い、炭酸で割って度数8~9%を自分で作って飲む層が増えるのでは。ビジネスチャンスが訪れる可能性もある。
──高アルコールをやめる流れは、業界にとってマイナスだけではないと。
お酒のトレンドは毎年変わっていく。ガイドラインが出れば、それに代わる新しいスタンダードが生まれてくる。必ずしもネガティブな部分だけではない。
適正飲酒で楽しんでもらいたい
──世間の飲酒に対する見方は厳しくなってきています。
よくタバコは「百害あって一利なし」と言うが、お酒は昔から「百薬の長」なんてうたわれてきた。適量を飲めば精神安定や気分転換につながるし、健康増進の作用もあると言われてきた。今回のガイドラインについては「皆さん、適量をたしなむようにしましょう」と、改めてメーカーと消費者に認識してもらうためと捉えている。
今は宴会で酔っ払ってネクタイを頭に締めるなんて人はいなくなってしまった。昔はそれが愛らしいというか、微笑ましい世界だったわけだが、そういうのは引かれるし時代ごとに感覚や捉え方が変化している。
正直、そうした風潮に少し寂しさも感じる。やっぱりわれわれは酒屋だから、適正飲酒で楽しんでもらいたい。気分よく明日の仕事なり活動につなげていただきたいというのが願いだ。
田口 遥:東洋経済 記者
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