ネット広告を荒らす「悪意」に社会は勝てるのか 広告市場は過去最高でもメディアが暗い理由
東洋経済オンライン / 2024年3月11日 12時0分
そして、新聞デジタルは208億円と前年から下がってしまった。紙の新聞広告も例年通り下がって3512億円だったので、両方とも落ちた。新聞も雑誌に倣ってデジタルを伸ばせばいいと多くの人が思い描いていただろう。
だが雑誌デジタルは横ばい、新聞デジタルは下がった。
インターネット広告費が順調に伸びている中、新聞と雑誌のデジタル版は一緒に伸びるはずだ。それなのに下がったのは、大異変と言っていい。いったい何が起こっているのか。
ネット広告を今、悪意が侵しはじめている。その典型が、MFAサイトだ。Made For Advertisingの略で、文字通り「広告収入のために作られたサイト」のこと。
MFAは、コンテンツとして、例えばYouTubeの動画を転載し、その周りを広告枠が埋め尽くして安易に広告収入を得ようとする。真っ当な事業者ではなく、得体の知れない何者かが運営する、怪しいサイトだ。ただ、コンテンツ自体は危険なものでもなく、一見すると法には触れない。
これまでのネット広告で広告主が問題にしてきたのは、極端に政治的に偏ったコンテンツや、怪しいビジネスを呼びかけるページに広告が掲載されるとブランドが毀損されることだった。あるいは、広告のカウント数を水増しするページは「アドフラウド(広告詐欺)」と呼ばれ問題視された。
ところがMFAにはそんなあからさまな問題は見つけにくい。広告が多すぎるだけで、ブランドセーフティを危うくするとは言いがたい。だがやはり真っ当なメディアビジネスの場ではなく、質の低いコンテンツで広告収入を言わば収奪するためのサイトなのだ。社会的に許されるものではない。
しかも、昨年あたりからはコンテンツをAIで安易に生成するMFAが出てきて加速度的に数が増えてきた。あっという間に世界の広告市場で問題になった。
またSNSも油断のならない場になってきた。Facebookではお友達の楽しい投稿の次に、著名人の名前と写真を使った投資商品の広告が平気で流れてくる。世界的アニメ作家が投資を呼びかけるはずがない。ベテランジャーナリストが金融商品の広告をするわけがない。誰がどう見ても詐欺広告なのに、いっこうになくならないのだ。運営会社のMetaは2022年の業績悪化から一転、2023年は高収益を上げたが、詐欺広告によるV字回復かと疑いたくなる。
画面が広告だらけでどれが記事かわからない
だがもっと問題だと私が感じているのは、真っ当な媒体社であるはずの新聞社や出版社が運営するデジタルメディアで、広告が溢れかえるほど表示されることだ。アドフラウドならぬアドフラッド、広告の洪水だ。
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