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「田舎/夏/恋人消える物語」なぜTikTokでバズる? SNS時代に特化した「ブルーライト文芸」のキャラ

東洋経済オンライン / 2024年3月12日 12時0分

ブルーライト文芸の特徴の一つが、「ヒロインが<消失する>」ことにあったが、こうしたストーリー展開に比べると、キャラクター造形自体はこだわりが薄いのである。

SNS時代に特化したキャラクター

こうした個性の薄いキャラクターについては、文学が好きな人からすれば「キャラクターを描くことができていない」という批判の対象になりそうだ。

しかし、ぺシミ氏はこうしたキャラクターが生まれた背景には、現代の読者の好みの変化があるのではないかと指摘する。

「ケータイ小説に出てくる女子高生と、ブルーライト文芸に登場する女子高生のキャラクターは個人的にかなり違います。ケータイ小説の主人公のほうが、孤独で人生に対して必死で向き合っている感じがします。

一方、ブルーライト文芸で描かれる女子高生は、SNSや常時接続を前提としてあらゆるコミュニケーションを行っている。ペルソナも多様だし、コミュニケーションの相手も対象も違う。対人関係において、ある意味での“ライトさ”があるように感じます」

SNSが生活を覆う時代、個人は、いくつかのアカウントによって、常にスイッチングが可能になってきた。いわゆる「別垢」でまったく異なる人間関係とつながることも可能になった。

さらに、SNSを見れば、まばゆい活躍をしている、特別な同世代はいくらでも目にすることができる。

ある意味では、自分自身が一人の人間という固有の存在ではなく、切り替えも代替も可能な一人であるに過ぎない……。

その意味でブルーライト文芸に登場する、無個性かつ匿名性の高いキャラクターは、SNS時代に適合したキャラクター像だともいえるだろう。

また、ぺシミ氏は元々中高生が読んでいたライトノベルの衰退も挙げる。

「今のライトノベルは、中高生に売ることを諦めているように感じます。タイトルもセンシティブで、学校では読めないものも多い。また、女性向けのラノベでも悪役令嬢とか婚約破棄みたいなものが多くて、はたして、そんな人間関係にドロドロしたストーリーを中高生が読みたいかというと疑問です。

なので、今の高校生にとってリアリティがあるのは、ブルーライト文芸的な描かれ方の青春小説なのではないでしょうか。ライトノベルが吸収できない層をライト文芸が吸収している側面はあって、中高生が自分に共感できるものを求めていった結果、ライト文芸が盛り上がりつつあるのではないかと思います」

そのうえで、ペシミ氏はこう指摘する。

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