「重労働ありがとう」挨拶が示す"休めない国"日本 「休み方」研究20年の医学博士が鳴らす警鐘
東洋経済オンライン / 2024年3月12日 10時30分
このような日本の職場で、本当に「疲れた」ときにちゃんと休むことはできるのでしょうか。
ここで1つ質問です。あなたは疲れたことを理由に、仕事を休んだことがありますか?
朝起きたら何だか疲れている。体も重だるい。そんなとき会社に連絡して、
「今日は疲れているので、休ませてください」
とお願いしたことがある人はどれだけいるでしょうか。
「そんなことをいったら、『冗談はよせ』と一蹴されるに決まっている」
「『君だけじゃない、みんな疲れているんだ。さっさと会社に来い』と返されるのが関の山です」
という皆さんの答えが聞こえてくるようです。
それどころか、有給休暇さえ、上司がイヤな顔をするので申請しづらいというのが現実かもしれません。
何しろ日本は、学校を1日も休まなかった人を表彰する「皆勤賞」まであり、毎日休まず会社や学校に行くこと自体に価値をおく社会です。まだまだ多くの人が、休むことイコールなまけること、さぼることだと捉え、休むことに罪悪感を抱いています。
疲れていればパフォーマンスが出ないことはみんなわかっています。それでも自分だけ勝手に休むわけにはいかない。だから出社はするけれど、能率が全然上がらない。いったん出社すれば、上司が帰らないと自分も帰れない。「遅くまで会社に残っていると熱心だ」「早く帰るやつは仕事をしていない」といわれる……。
こうした〝疲れているのが当たり前の社会〞〝疲れたら休むという当たり前のことができない社会〞はやはりおかしいのではないでしょうか。
「休んだときはお互いさま」の精神で
ドイツでは、「連邦休暇法」という法律があり、従業員に年間24日以上の休暇を与えないと雇用者が罰せられてしまいます。
聞いた話によれば、このようになったのは宗教上の理由もあるようです。
キリスト教の考えでは、働くことは美徳ではなく「罰」。「苦役としてやらされている」という発想ですから、一緒に働いていても、「早く帰りたい、会社には可能なかぎりいたくない」という人ばかりでした。
日本人の感覚からすると、「そんなに帰りたくてソワソワしていたら、仕事に身が入らないのでは?」と思ってしまいますが、実際は逆です。
限られた時間内に、いかに集中して効率よく仕事をするか、休みをとるために、がんばって仕事を片づけよう……と知恵をしぼります。
だから生産性が高いのです。
その点、日本人は長時間、文句をいわずに働くので「働き者」だというイメージがありますが、実際は1時間あたりの生産性が上がりません。非効率な仕事をしているときもあるような気がします。
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