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和田秀樹「認知症予防に脳トレは無意味」語る根拠 脳の活性化に有効なのは「他人と会話すること」

東洋経済オンライン / 2024年3月14日 16時0分

国際的な科学雑誌『ネイチャー』やアメリカの医学会雑誌『JAMA』でも、いわゆる脳トレの効果にまつわる大規模調査の結果が発表されています。

そのうちの一つ、アラバマ大学のカーリーン・ボール博士による2832人の高齢者に対する研究では「言語を記憶する」「問題解決能力を上げる」「問題処理能力を上げる」などのトレーニングをした場合、練習した課題のテストの点だけは上がるのですが、他の認知機能は上がらないことがわかっています。与えられた課題を繰り返し行えばそのことはできるようになっても、脳全体の活性化にはつながらないのです。

脳のトレーニングに有効な他人との会話

ではいったいどうやって「頭を使う」といいのか。私の経験上、もっとも効果が高いと思われるのは、他人との会話です。他人としゃべる時には強制的に頭を働かせる必要があります。自分が話したことに対して相手からの反応が返ってくるというやりとりで「頭を使う」ことが、有効な脳のトレーニング法となるのです。

普段から頭を使っているつもりの人でも、認知症と強い関連のある前頭葉は案外と使っていないものです。読書は言語を司る側頭葉を使うだけですし、計算やある程度難しい数学の問題を解く時も頭頂葉しか使っていません。

かつて前頭葉を切り取ることである種の精神病を治療することを目的とした「ロボトミー手術」というものがありました。さまざまな問題が起きたため、今では行われなくなりましたが、この手術の後でも知能指数はまったく落ちなかったといいます。

つまり、前頭葉は一般的な知的活動には使われていないのです。前頭葉が使われるのは、何かを創造したり新規なものに対応したりする時で、前頭葉が老化すると、決まった行動を好むようになります。

さまざまなことに挑戦して前頭葉を鍛えよう

行きつけの店にしか行かなくなったり、同じ著者の本ばかり読むようになるのが一つのサインです。逆に言えば、新しい店に出かけたり、読んだことのない作家の小説を読んだり、可能ならば俳句を詠んだり小説を書いてみると前頭葉が鍛えられます。

日本では大学でもあまり前頭葉を使う教育をせず、仕事でも自分で考えたことをやるのではなく「言われたことができればいい」という風潮が強いため、前頭葉を使うことが苦手な人も多いのですが、まだまだ続く長い人生のためにもぜひチャレンジしてください。

また最近の研究では、きちんとした対処をすれば認知症の進行を止めるだけでなく、知能が回復する可能性も指摘されています。

幹細胞や上清液を使って生きている脳を元気にしようという治験を行っているグループがあるのですが、そこで聞いた限りだと、それらの処置をすることで長谷川式認知症スケール(簡易的な知能検査)などの点数が上がるそうです。

こういった研究が進めば、将来的には萎縮した脳を復活させることが可能になるかもしれません。

和田 秀樹:精神科医

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