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都の学校カウンセラー「250人雇い止め」の衝撃 学校や保護者から評価高く、経験豊富なSCが…

東洋経済オンライン / 2024年3月14日 7時0分

山口さんが今の学校に配置されたのは1年前。通常、SCは6年間同じ学校に勤務するという。その間、計画的に時間をかけて人間関係を築いていき、配置換えが近くなったときは子どもや保護者の心理的な負担を抑えるための準備をする。

山口さんは「SCが1年で突然いなくなっては、子どもたちも戸惑うのではないか」と心配する。実際に中学生の子どもを持つある母親は「以前、子どもがSCが代わったという理由で面接に行くのをやめたことがあります」と語る。SCの能力や経験はもちろんだが、「同じ人が、できるだけ変わらず同じ場所にいてくれる」ことの安心感が大切なのだという。 

都のSCの勤務日数は1校につき年間38日で、平均週1回のペースで出勤する。1人のSCが1〜3校を受け持ち、1校当たりの年収は約170万円。多くが大学院で心理学を専攻し、臨床心理士や公認心理師の資格を持っている。

山口さんの勤務校は1校。ほかの自治体のSCなどの仕事もあるのでただちに生活が困るというわけではないが、予想外の170万円の年収ダウンの影響は小さくない。

「まさか自分が雇い止めになるとは思いませんでした。どうして私が不採用なのか、その理由を知りたい」

都教委によると、都のSCは約1500人。全員が非正規公務員である「会計年度任用職員」で、都内の公立小中学校や高校などに配置されている。来年度以降の契約更新を希望して試験を受けたSCは1096人で、このうち250人が不合格となった。雇い止めの理由について都教委指導企画課は「雇用機会公平性の確保のため。SCをやりたいという市民の方々に広く挑戦する機会をもってもらうためです」と説明する。

SCは公務員なので、正確には「雇い止め」ではなく「再任用拒否」という。しかし、10年、20年と働き続け、その収入で生計を立ててきたSCにとっては事実上の解雇、雇い止めである。今回の“大量解雇”を受け、SCたちが加入する東京公務公共一般労働組合「心理職ユニオン」には、約70件の相談が寄せられているという。

取材では、話を聞いたほとんどのSCが山口さんと同じく「自分が雇い止めになるとは思わなかった」と口をそろえた。一方で会計年度任用職員であるSCの任用期間は原則1年。そのうえで都は「公募によらない任用は4回を上限とする」と定めている。会計年度任用職員への移行前から働くSCが書類審査や面接のある公募試験を受けなくても働けるのは最長で4年となっていた。

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