「文学は役立つのか」論争、SNSで何度も再燃する訳 前提が「定義」されていない議論は結局すれ違う
東洋経済オンライン / 2024年3月15日 11時0分
しかし、おそらくこの議員は、「特定の職業ではなくすべての高校生がいろんな職業に就く可能性を高めるためには」という文脈、あるいは前提で件の発信をしたのではと私は推察します。
SNSで批判を続けた人たちに残念ながら少しだけ足りなかったのは、その発言の前提を理解してから「高校生は三角関数よりも金融経済を学ぶべき」という発言に意味づけすることでした。
「エンジニアリングとしての数学」「経済を理解するための数学」「人材育成としての数学」など、数学にはいろんな側面があります。数学をどのような定義のもと、どの角度から語るかによって表現したことへの意味づけも変わってきます。
例えば「エンジニアリングとしての数学」という前提であれば、三角関数が不要などとは誰も思わないでしょう。もちろんあの議員もそんな発信はしないはずです。
しかし「人材育成としての数学」という前提であれば、三角関数を理解することより大事なものは確かにあります(ちなみに私はまさにそこで教育者をしています)。
「人材育成としての数学」という前提で語っている人の言葉を、「エンジニアリングとしての数学」という立場しか考えられない人が受け取ったら、それは共通認識が取れません。
この事例が教えてくれることは、前提が共有されていない文章をそのまま読んでもおそらく通じ合うことができないということです。
物事は多面体です。たくさんある面の中からどの面を選んでいるのかがわからないと、正しい・間違いの議論は成立しないのです。そもそも議論が成立していないので決着がつかず、再燃を繰り返す結果になっているのです。
ですから、私はこの記事の冒頭で前提を確認しています。それにより読者は「ああこの著者はその立場の人なのね」「この著者の前提は自分の前提と違うな」と理解します。
前提や立場が異なるのであれば、意見が異なることは自然です。どちらが正しい・間違いという議論自体、ナンセンスでしょう。
良いコミュニケーションには「定義」がある
このように、SNS上の議論は前提が欠けているから、「SNSの文章は読む価値がない」と考えているのです。
「前提を確認する」という行為は、数学だと「定義」にあたります。
数学は最初に定義をしないと始めることができない学問です。素数の性質を明らかにしたければまず素数とはどのような数かを定義しなければなりません。まず冒頭で定義する。これは極めて数学的な作法なのです。
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