親子の会話は「子9割:親1割」がちょうどいい訳 コミュニケーション力が育ち「自分で決められる子」に
東洋経済オンライン / 2024年3月15日 7時30分
毎日忙しくて、なかなか子どもの話を聞く時間が取れないという方は、周囲にいる「聞き上手な人」を思い浮かべてみてください。彼らは何ができているのでしょうか?
話の聞き方には、パッシブリスニング(受け身の聞き方)と、アクティブリスニング(双方向の聞き方)の2種類があります。
パッシブリスニングとは、相手の話を聞く側に徹し、こちらから発言をしないタイプの聞き方です。適度な相槌やうなずきなどはあるかもしれませんが、基本的には黙って話を聞きます。
アクティブリスニングとは、1957年にアメリカの臨床心理学者カール・ロジャース博士が提唱した相手の話を聞くときの姿勢や態度、聞き方の技術です。相手が発する言葉だけでなく、その奥にある感情や気持ちの変化まで、会話から読み取ろうとする聞き方だといわれています。これこそが、「聞き上手な人」の話の聞き方です。
最近の研究では、アクティブリスニングで話を聞けるようになると、理解力がアップし、自分に自信が持てたり、友人関係が良好になったり、メンタルが安定したりするといわれています。コミュニケーションが円滑に進むだけでなく、成績や自己肯定感アップにまでつながる聞き方です。
つまり、相手の話を聞く際にはただ聞くだけではなく、「積極的に話を理解しにいく姿勢や返答」が必要なのです。
ここから導かれる子どもとの会話の原則が、「子ども9:親1」です。
これは、子どもと親の話す割合を示しています。会話の9割は子どもに話させてあげてください。親はその話を聞くことに徹し、残りの1割で返答をしてあげるのです。
子どもが話したいことを親が潰してはいけない
ところがこの原則、実際にやってみると難しいのです!
子どもの話は要領を得ない、あちこちに話題が飛ぶ、単語が出てこないなど、さまざまな理由で、忙しい大人には実際よりも何十倍もの体感時間を要するでしょう。
また、親は自分の子どものこととなると、「うちの子はこういう子だ」という先入観を抱いてしまいがちです。そのため、子どもが話し始めた段階で親の持つイメージをもとに、勝手に話の行き着く先を予想して聞いてしまう傾向もあるのです。
今回のケースでも、無意識のうちに「うちの子はきっとお城を壊されて泣いたんだろうな」「先生に言いつけに行ったんだろうな」などと、子どもが話す出来事を予想して、先回りしてしまう傾向があるのです。
ですから、砂場での体験を話すわが子の話の途中で、「悲しかったね」「悔しかったね」「また作ろうね」といった返答をして、子どもの話を遮ってしまいがちなのです。
実は、ここがなかなか気づけない大きな落とし穴。
専門的な言葉を使うと、「認知バイアスによって、親が子どもの話をきちんと聞いていない」という例なのです。「認知バイアス」とは物事を判断する場面で、直感や以前までの経験に基づく先入観、他人からの影響などといった直接関係のない理由によって、論理的な考え方が妨げられてしまうという脳のクセのこと。
実は、よく話を聞いてみると、「壊れた砂のお城から探していた犬のおもちゃが出てきて嬉しかった」という結論となるかもしれません。
最後まで話を聞いてもらえなかった子どもからすると、「話を聞いてもらえなかった上に、悲しかったわけじゃないのに決めつけられた」「どうせまた言っても聞いてくれないし、わかってくれない」という思考回路に陥ってしまいます。こう考えると「バイアス」による決めつけ、意外と怖いですよね。
柳澤 綾子:医師、医学博士
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