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意外と知らない「教育委員会」どんな仕事なのか 学校への支援、民間企業との付き合い方など

東洋経済オンライン / 2024年3月15日 8時20分

公立学校ICT(情報通信技術)化事業として、ICT環境を整備することは、当時とても大事なテーマでした。

しかし、一方で忙しい教員たちに使い勝手のわからないITを導入することで、さらなる負担を強いることになってしまってはいけない、という心配もありました。

ただ新たなシステムを導入するだけでは、教員が使いこなせないかもしれません。使うための研修も必要になり、時間も労力も割かなくてはなりません。機器を導入しただけではまったく意味がないのですから。授業準備のために都度、時間をかけるようでは教員の負担が増えて本末転倒です。そこで外部企業の協力を得ることにしました。

例えば、配線等がすべて事前にセットアップされていて、そのままで使える「IT教卓」という機器を新たに開発することにしました。黒板をホワイトボードに置き換えて、超短焦点プロジェクタを使って画面を投射する方法を導入したのです。簡単に言えば、現場の教員たちが負担なくすぐに使えるICT化を推進したということです。

ちなみに民間との交渉の仕方にも、ポイントがあります。上から目線で民間企業を利用してやろう、という姿勢はもってのほかです。あくまで公務員としての立場をわきまえながら、民間とお互いにウイン・ウインになるようにするのです。やはり、みんなが幸せになる方法って何なんだろうか、と考えるべきだと思うのです。

ベンチャー企業を相手にした時は、将来的にその企業が教育の本質をついた、みんなの役に立つような仕事ができるような企業に成長するためにはどうしたらいいかといったように、僕は考えています。

実際、当時は小さなベンチャーにすぎない存在だったのに、今は大きな企業になっているケースはいくつもあります。その人たちが今なお、いろんなアイディアを持ってきてくれたりして僕を助けてくれています。

教育委員会は学校を支援すべし

話を元に戻すと、ICT化にはもちろん、最初はいろいろ抵抗を示す教員たちがいました。教員組合も導入には反対でした。

僕は「今なぜICT化が必要なのか」という意味と意義を説明して、とことん相手が理解してくれるまでじっくりと向き合って話をしていきました。

教育委員会が現場の負担を増やそうとしているわけではない、ということ。そして、生徒たち、保護者たちのためになる。だから導入したいと教育委員会は考えている。その真意がきちんと伝わった時、全体が動き出しました。

結果としては、ほぼ3年間で区立小中学校全40校、総教室数700超をICT化し、教員たちが使いこなすようになりました。学校側が喜ぶような支援ができたと自負しています。

教育委員会は助言をくれる。我々の味方なのだ、という理解が深まっていくと、「ぜひアドバイスをしてほしい」「ぜひ指導課長から校長へもちかけてほしい」などさまざまな要望も出てきました。「わからず屋の校長を動かすためには、教育委員会から話をするほうが物事が進みますのでよろしく」というお願いもありました。

教育委員会は決して監視一本ではなくて、学校を良くしていく奉仕者としての役割を担っている。そうした自覚のもとに仕事を進めていくことが何より大切です。教育委員会は資金面、施設面でより良い教育活動をするための法的な根拠を持っているのですから、最大限学校を支援すべきなのです。

工藤 勇一:横浜創英中学・高等学校校長

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