北陸新幹線、敦賀延伸開業が生む「直通と分断」 福井県が東京と直結、関西へは乗り換え必須
東洋経済オンライン / 2024年3月16日 8時20分
だが、2020年秋になって大幅な工事の遅れと建設費の増加が避けられない事態が表面化。国土交通省は急きょ検証委員会を立ち上げ、原因の究明や工程短縮策の検討を進めることになった。
工期が逼迫する原因となったのは、1つは2019年に貫通した石川・福井県境にある加賀トンネル(全長約5.5km)で、翌2020年3月に底部の地盤が膨張する「盤ぶくれ」による亀裂が見つかり対策が必要となったこと、そしてもう1つの大きな要因は、敦賀駅での新幹線と在来線の乗り継ぎ対策として、駅施設の大幅な設計変更を行ったことだ。
「フリーゲージ」断念が落とす影
北陸新幹線の開業後も、北陸地方と関西方面の直通運転を維持する方法として導入が考えられていたのがFGTだ。JR西日本は2012年、敦賀延伸時の導入を検討する方針を示した。
FGTは国が1990年代から開発を進め、2004年の整備新幹線に関する政府・与党合意で西九州新幹線(九州新幹線西九州ルート)に導入を目指すとされた。その後試験車両による技術開発が進み、2014年には「基本的な耐久性能の確保にメドがついたと考えられる」との評価を得ていた。
JR西日本は2014年10月、雪や寒さに対応した「北陸仕様」のFGT導入に向けて「模擬台車」による試験の開始と、試験車についても同年度中に設計・製造に着手すると発表した。だが、同年に九州で耐久走行試験を開始したFGTは車軸の摩耗などの問題が発生。その後もトラブルは続き、コスト面での問題も浮上した。2017年夏、JR九州はFGTによる西九州ルートの運営は困難と表明し、翌2018年夏に与党の西九州ルートに関する検討委も導入を断念。北陸新幹線についても同年、国交省はFGTの導入を断念する方針を示した。
FGTの雲行きが怪しくなる中、2017年10月に北陸新幹線の敦賀駅は1階に在来線特急ホームを設ける形に設計を大幅変更。長い跨線橋を渡らずに、3階の新幹線ホームと1階の在来線特急ホームを縦移動だけで乗り換えができる構造に改めた。
だが、この変更によって敦賀駅工区の工期は逼迫。加賀トンネルの亀裂発生もあり、それまで掲げていた2022年度末の開業予定を約1年遅らせることとなった。
新幹線の開業に合わせ、これまで金沢や福井と大阪・名古屋方面を乗り換えなしで結んでいた在来線特急はすべて敦賀止まりとなり、新幹線との乗り換えが必要になる。敦賀駅での3階新幹線ホームから1階の在来線特急ホームへの乗り換え所要時間は最短8分としているものの、JR西日本が1月に社員らを動員して実施したシミュレーションでは10分以上を要した。混雑時の乗り換えには課題がありそうだ。
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