ブラタモリ終了、たけし卒業にプラスしかない理由 昭和の大物司会者たちはいかに最後を飾るか
東洋経済オンライン / 2024年3月16日 12時10分
さらに長年最前線で活躍してきた大物だからこそ、制作費削減という理由も避けられない現実。現在、民放各局は「低下する放送収入をどのように配信収入などに移行していくのか」というステップを踏みはじめたところであり、台所事情が厳しいタームであることは間違いありません。実際、「アンビリーバボー」が、たけしさんの後任を置かないのは、単に代わりが利かないからだけではなく制作費の問題もあるのでしょう。
ともあれ、一歩引いてビジネス的な目線で見れば、「この世代交代はベストタイミングか?」と言われたら疑問が残るのも事実。「80歳まで最前線に立たせるなんて遅すぎる」と感じられても仕方がないところがあります。
テレビの企画・制作力を示す絶好機
特に視聴率の低下が叫ばれた2010年代はその流れを止めるべく、リアルタイム視聴の多い中高年層に向けた番組を量産。そのため世代交代はせず、昭和時代から出演を続けるベテランに頼るという状況を続けていました。目先の世帯視聴率を獲るために、録画視聴やネットコンテンツを好む傾向の強い視聴者層を軽視していたのです。
しかし、そんな目先の数字を追う編成戦略が長く通用するはずがありません。スポンサーが「どういう人がどれだけ観ているのか」「自社商品の広告効果はどれだけあるのか」を追求するようになり、その結果“コア層に向けた番組制作”という現時点での答えが浮かび上がってきたのです。
番組が終了すれば別の番組を始め、司会のポストが空けば別の人物を起用して活性化させる。長きにわたってメディアのトップに君臨してきたからか、テレビはそんな当たり前の新陳代謝が大の苦手。これまでは目先の視聴率獲得が求められるうえに、芸能事務所とのつき合いもあって、新たな番組やスターを育成することに消極的でした。だからこそ世代交代が加速した現在の状況は、「やっと業界をあげて前に進める」「今こそ再びテレビに注目を集めるセカンドチャンス」という感があるのです。
その点、見る側の私たちにとって大物司会者を見る機会の減少は寂しさこそあるものの、別の番組や新たなスターを楽しむチャンスがあるということ。もしテレビ局が大物司会者を外しただけで世代交代や番組と司会者の育成を躊躇していたら、声をあげて背中を押すくらいの姿勢を見せていいのかもしれません。
テレビ業界にとって大物司会者が相次いで去る今春は、2010年代の苦しい時期を経てようやく訪れたセカンドチャンス。人々にテレビ局の企画・制作力を示すような番組を手がけ、その象徴として新たな司会者を据えて育てていけたら、視聴率・配信再生数ともに一定以上の結果が得られるのではないでしょうか。
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