「札幌ドーム」と「日ハム新球場」の残酷な明暗 ネーミングライツの応募もなく苦戦が続く
東洋経済オンライン / 2024年3月17日 9時0分
「指定管理者」は、一般的には地方公共団体から指定管理者が委託料を受け取って管理、運営を任されるが、マリーンズの場合、球場の使用権だけでなく施設維持管理・受付・貸出業務・公演なども含めた契約になっている。マリーンズは試合興行のほか、球場内での飲食、物販、広告看板の販売など包括的なビジネスができるようになり、経営状況は大幅に改善された。
MLBでは市や州が球場を建設してプロ野球チームに無償、あるいは低額で貸与してビジネスをさせ、町の活性化や税収増につなげるビジネスが一般化している。ニューヨーク・ヤンキースもニューヨーク市が建てたヤンキースタジアムを本拠地にしているが、マリーンズの場合、それに近い形だと言えよう。
マリーンズに倣って多くの球団が、本拠地球場を「借りて使う球場」から「自前の球場」にするよう球場を所有する公共団体に働きかけるようになった。本拠地球場と球団との関係は、個々に違っているが、ただ高い使用料を払うだけの「大家と店子」の関係のままの球団は次第に少なくなっていった。
第3セクターが指定管理者の札幌ドーム
しかし札幌ドームは、依然として市や地元財界が出資する第3セクターの株式会社札幌ドームが指定管理者だ。ファイターズは、再三、指定管理者にするようドーム側と交渉をしたが、はねつけられてきた。
他球団の場合、球団が球場内の広告看板をスポンサーに販売したり、球団プロデュースの飲食店、物販店を球場内に出店して収入を上げるなど球場を「コンテンツ」として最大限に活用することができたのだが、ファイターズの場合、毎試合球場使用料を支払ったうえに、広告看板や場内の飲食物販の収入もドーム側に握られていた。ファイターズという存在がなければ、こうした収益はありえなかったのだが。
ファイターズは21世紀に入ってから、ダルビッシュ有、大谷翔平をはじめとするスター選手を輩出したが、活躍して年俸が上がると球団は彼らを放出した。その背景には、球団の経営が札幌ドームとの契約によって圧迫されていた、という部分もあったのだ。
2016年にファイターズは北海道で独自に球場を建設することを決定した。当初、新球場の予定地には札幌市も含まれていたが、札幌市に隣接する北広島市のアプローチもあり、北広島市に決定した。
2023年開場した、新球場エスコンフィールド北海道は、最新の「ボールパーク構想」に則った開閉式のドーム球場であり、飲食、物販などの施設も充実、周辺開発も進み、ドーム球場を核とする「新たな街づくり」と言ってもいい規模になりつつある。
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