「発酵」に対して世界で巨額マネーが動き出す理由 ビッグビジネスになりつつある発酵の分野
東洋経済オンライン / 2024年3月21日 11時30分
代表的なものが、アメリカのパーフェクトデイの取り組みです。同社は、微生物を利用して「牛乳」を生産する技術を開発しました。そして生産された「牛乳」をもとに、ヨーグルトやアイスクリームなどの「乳製品」を開発、すでに一般に流通しており、アメリカでは大手スーパーなどで購入することができます。
他の事例としては、イスラエル企業のリミルクも、乳タンパク質の代替となるタンパク質を「精密発酵」で生産する技術を研究し、デンマークに世界最大規模の精密発酵工場の建設を計画しています。
また、アメリカのエブリカンパニーでは卵のタンパク質を代替する技術を開発していますし、同じくアメリカで代替肉を研究しているモチーフ・フードワークスも様々な代替タンパク質の製造法の中で、「精密発酵」にももちろん注目し、関連企業との連携を進めています。
この4社はそれぞれ、2023年現在でパーフェクトデイを筆頭に、いずれも累計1億ドル以上の資金調達に成功しており、他のスタートアップも合わせると世界全体では年間で16億ドル以上の投資が集まっています。この事実だけでも、発酵がビッグビジネスになりつつあることがわかります。
ガストロノミーの中心としての「発酵」
続いて、テクノロジーだけでなく、文化の面から見ていきましょう。「ガストロノミー」という言葉をご存じでしょうか。
ガストロノミーとは、料理がどのように発展してきたか、なぜ特定の料理がその場所で生まれたのか、料理が私たちの文化や社会にどのような影響を与えているのかを考える姿勢のことです。
このガストロノミーのど真ん中にあるのが、発酵と言えます。なぜなら、発酵はその芸術性、歴史、科学、社会学的な要素がとても豊富だからです。
発酵食品は人類の歴史と深く結びついています。世界のあちらこちらで発酵食品が生まれ、それぞれの生活文化を通じて様々に発展してきました。日本の醤油や味噌、韓国のキムチ、ヨーロッパのワインやチーズなど、発酵食品は各地の歴史と文化に深く根ざしています。
「美食」のペアリングには欠かせない、日本酒、ワイン、ビール、コーヒー、紅茶、中国茶などの飲み物のほとんどは、発酵が関与して生産されており、特にアルコールが一大産業になっていることは論をまちません。
「麹」の世界カンファレンス参加者の約75%が海外から
さて、「麹」と言えば、「塩麹」など、日本に古くからある味噌や醤油、清酒などの原料というイメージをお持ちの方も多いと思います。
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