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「発酵」に対して世界で巨額マネーが動き出す理由 ビッグビジネスになりつつある発酵の分野

東洋経済オンライン / 2024年3月21日 11時30分

その日本の発酵食品のもとになっている「麹」についてのオンラインカンファレンス「Kojicon」が、アメリカで2021年から開催されています。主催者によると、第1回目の参加者は100人程度の予想であったところ、第1回からその6倍の600人の参加がありました。

私も3回目となる2023年3月に、プレゼンターとして招かれましたが、このカンファレンスの35人のプレゼンターのうち、日本からの参加者はたった4人。その他は、ニューヨーク、ボストンなどのアメリカ国内はもとより、スイスのチューリッヒ、インドのムンバイ、オーストラリアのメルボルンなど、世界各地から参加されている方でした。

「KOJI(麹)」はすでに、ワールドワイドな単語になっており、日本人がいなくても、世界中の人の間でどんどん議論が進んでいます。「麹」のことなら日本に圧倒的なアドバンテージがあるとはいえず、むしろカンファレンスでは日本人の存在感はほとんどありませんでした。

2019年、「北米酒造組合」という組合が誕生しました。この組合には、北米地区でSAKE(現在、「日本酒」は日本国産の米を用いて、日本国内で生産された清酒に使う用語とされているため、海外で生産される清酒は「SAKE」と表記します)を生産する生産者はもちろん、米農家や、関連会社も加入しています。なかでも注目は、SAKEを生産する会社だけでも20近くの酒蔵が加盟していることです。

実は、これまでも、アメリカではSAKEが造られていましたが、端的に言えば、日本資本による日本に親和性のあるコミュニティへの販売が主流でした。

しかし、2010年代以降になると、非日本人が非日本人を対象に、SAKEを製造し販売する流れが生まれました。これが、「北米酒造組合」の設立につながります。

彼らは非日本人を対象にしたマーケティングを行い、斬新なラベルデザインに、商品の設計についても、イノベーティブなSAKEを製造しています。

SAKEに限らず、他の日本の伝統的な発酵食品も、現地の人が、現地のコミュニティのために製造、販売する動きが出てきています。

フランス人による味噌メーカーも

例えば、「養老味噌」という味噌メーカーは、パリに拠点があり、パリに工場を持つ、フランス人による味噌メーカーです。彼らのWebサイトには「フランス産、麹と味噌の伝統製法」とキャッチフレーズが掲げられています。

他にも、私の知る限りで、スイス、オランダ、イタリア、スペインなど、ほぼヨーロッパの大半の国で、現地の人が日本風の味噌や醤油を製造しています。まだ清酒SAKEのように大規模な資本レベルにはなっていませんが、近い将来、同じような動きになると予想しています。

このように、発酵は人類の未来に繋がるテクノロジーとしても、歴史や伝統を繋いでいく文化やガストロノミーの面からも世界中から注目されています。

その中で、日本が培ってきた発酵の技術と文化にも、改めて注目する必要があるといえるのではないでしょうか。

村井 裕一郎:糀屋三左衛門 ・第29代当主

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